犬は概ね1歳を超えるあたりから、性的本能が芽生えてくると言われています。メスであれば、原則的に生理(ヒート)時が発情期にあたるので、発情期が来たことを容易に知ることができます。しかしオス犬にはヒートなどがありませんので、メスのようにハッキリと発情期を知ることができません。
犬の去勢・避妊手術をすべきかどうか…飼い主としては頭を悩ませる問題でもありますよね?人間と同じように、生理の問題もあります。
実際、獣医にしてもブリーダーにしても、去勢・避妊を勧める人とそうでない人がいますが、結局のところ、それを決めるのは飼い主に託されています。
ここでは、犬の去勢・避妊手術そのものが正しいことなのかそうでないのかという議論は別にして、去勢・避妊手術の必要性、メリット・デメリット、そして手術のタイミングや費用などについて解説します。
参考:いぬのきもち
犬の発情期のしるし
冒頭でも触れましたが、基本的にオス犬はメス犬のようにハッキリとした発情期というものはないと言われています。オス犬はメス犬のヒート時に発せられるニオイによって性的興奮を覚えます。それを合図として交尾活動を行うのが習性ということですね。
そのため、ヒート時のメスを、むやみにオス犬へ近付けてはいけないと言われているのです。どんなに従順な犬でも、ヒート時のメスを目の当たりにしてしまうと飼い主でもコントロールが効かなくなってしまうことも多々あります。
以上のように、オスには明確な発情期はありません。しかし、たとえば人間の足や手にしがみついて腰を振っていたりする場合も、一種の発情期とみなすことができます。
人間の女性が発するフェロモンに反応して発情してしまうこともありますし、メス犬のニオイが服に付いていたりしても発情することがあります。オス犬が発情しているかどうかは、陰部が出ている(勃起している)かどうかで判断することができます。
発情行動としてのマウンティングもある
発情によって人の手足などにしがみつき、腰を振る行動もマウンティングのひとつです。マウンティングといえば、自分の力を誇示するために相手に馬乗りになる行動ですが、発情中でもマウンティングを行います。
同じオス犬にマウンティングをしている場合は、単に力を誇示しようとしている行動です。逆にメス犬に対してマウンティングしている場合は、発情していることも考えられるので注意が必要です。
オス犬の去勢手術について
あまりにマウンティングがしつこい場合や、ヒート時のメス犬に対する興奮状態が激しい場合などは、去勢手術という方法もあります。
去勢手術も他の手術と同様に全身麻酔による手術となりますから、犬の体にも相応の負荷がかかります。麻酔薬による身体的な負担は昔ほどではなくなってきているとはいうものの、それでも手術に二の足を踏む愛犬家も多いのが実情です。
それでも去勢手術を望むのであれば、高齢になってからではなく、比較的若いうちに済ませておくことをおすすめします。
去勢手術のメリット
去勢手術をするメリットとして挙げられるのは、以下のようなものがあります。
- 突発的な交配を避けられる
- マウンティングなどの改善
- 前立腺などの病気予防
- 発情時の興奮に伴う身体的・心理的負担の軽減
去勢手術をすれば、少なくとも発情に伴うマウンティングといった問題行動の改善に繋がります。
また、発情中はとても興奮するため、身体的にも負担がかかりますし、大きなストレスにも晒されることになりますから、去勢手術をすることでそうした心配もなくなります。
去勢手術のデメリット
メリットがあればデメリットもあります。まず挙げられるのが性格の変化です。人間もそうですが、去勢することで性格が中性的になってしまうことがあります。今まではオス犬らしく力を誇示するような行動をしていた犬が、おとなしくなってしまうというケースもあります。
また、愛犬の子供を作りたいと思ってもそれができないということになります。精巣を摘出してしまうため、精子を確保することもできませんから、生殖行為そのものを諦めることになります。
さらに、先にも述べましたが、手術によって身体的な負担も大きくなりますから、しなくてよい手術であれば無理にする必要はないとも言えます。以上の3点が、去勢手術による大きなデメリットとしてよく知られています。
去勢手術にかかる費用はどのくらい?
去勢手術に必要となる費用は、一泊の入院費用も含めて2万円前後~3万円程度を見込んでおきましょう。もちろん、費用は動物病院によって異なりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
また、滅多にあることではありませんが、あまりにも高額な費用を請求されることがないよう、事前のリサーチはしっかり行っておきましょう。
メス犬の避妊手術について
避妊手術は、そもそも病気に伴う手術というわけではありませんから、健康な体にメスを入れることに抵抗を覚える飼い主も少なくないはずです。冒頭でも述べたように、避妊手術に関しては賛否両論ありますし、これは永遠に結論の出ない問題だとも言えるかもしれません。
本来、避妊手術の大きな目的は、望まれない妊娠を予防する目的がほとんどでした。外で犬を飼育する家庭が多かった昭和の時代で言えば、避妊手術をする目的の多くが、望まれない妊娠を予防するためでした。
しかし、室内飼育する家庭も増え、昔ほど野良犬を頻繁に見かけることもなくなった現代にあっては、その目的も疾病リスクの回避という理由が大勢を占めています。
ここに挙げたメリットやデメリットを十分考慮し、獣医さんともしっかり話し合った上で、適切な判断をするようにしましょう。
避妊手術のメリットは?
避妊手術をする上でのメリットとしては、やはり子宮に関する疾病などのリスクがなくなるという点です。犬も人と同じで、子宮があるかぎりそれに関連する疾病のリスクがあるのは当然ですから、あらかじめ子宮を取ってしまうことで、生理やそのリスクを減らせるメリットがあります。
さらに、屋外で飼育している場合であれば、野良犬との交配などで望まぬ妊娠をしてしまうというリスクも少なからずあります。これは、飼い主の飼育管理怠慢という問題はあるにせよ、リスクを減らすという意味では避妊手術をするのもひとつの方法と言えます。
また、メス犬のヒート時には、安易に散歩やドッグランなどの施設などに連れ出すこともできなくなります。ヒート中の犬は攻撃的な一面を見せることもあるため、そうしたことを防ぐために避妊手術を検討する飼い主もいます。
避妊手術のデメリット
メリットがあればデメリットがるのはどんなことでも同じです。避妊手術を考えるなら、デメリットも把握しておきましょう。
全身麻酔による負担
犬にとって全身麻酔は相当な負担だと言われています。現在の全身麻酔は、昔ほど大きな負担がなくなってきたとはいえ、それでもある程度の負担になってしまうのは否めません。肝臓への負担も大きいとして手術を回避する飼い主さんも少なくありません。
尿失禁
犬種による個体差もありますが、老犬と同じような尿漏れ症状が、副作用として現れやすいというデメリットがあります。個体差というものがあるにせよ、絶対にそうならないという保証はどこにもありません。
肥満
避妊手術をした犬の多くは肥満となります。ホルモンバランスの乱れによって基礎代謝自体が低下してしまうことが原因です。フードやおやつなどは、適度にコントロールする必要があります。
オス化に伴う攻撃性アップ
オス化によって、攻撃性がアップしてしまうこともあります。特に、まだ成犬として成熟していない状態で避妊手術をした犬に多く見られます。ヒート時の攻撃性は予防できても、オス化によって攻撃性が上がってしまうのであれば本末転倒です。
ただしこれにも個体差がありますし、医学的な結論自体もはっきりと示されているわけではありませんが、性格に変化が現れることは間違いないようです。
被毛の変化や皮膚炎
脱毛したり、パピーのような被毛が生えてきたりすることがありますし、陰部などに皮膚炎を起こす犬もいます。これも、ホルモンバランスの乱れによるところが大きいので、避妊手術後の被毛ケアや皮膚ケアには気を使う必要があります。
メリットとデメリット、どちらを優先するのかは飼い主の判断次第ということになります。難しいことではありますが、手術をするにせよしないにせよ、ある種の覚悟は必要ですね。
避妊手術するならどのタイミングがいい?
避妊手術をするなら、高齢よりも若いうちに行った方が確実です。そこにはやはり、「手術をしなければならない」という問題があるからです。手術自体は、長くても2時間以内で終わりますし、入院も早ければ1日で退院となります。
しかし、体にかかる負担を考えれば、必然的に若いうちに済ませておいた方がいいということははっきりと言えます。術後の回復にしても、若い方が早い傾向にあるのは言うまでもありません。
避妊手術をする年齢としては、しっかりとした成犬期を迎えてからとなりますから、あまりにも幼い時期に避妊手術をするのは避けた方がいいでしょう。犬種による個体差もありますから、獣医と相談の上、愛犬にとって適切だと思われるタイミングが望ましいと言えます。
避妊手術にかかる費用
避妊手術に必要となる費用は、概ね5万円前後が目安となります。もちろん、入院日数によっても異なりますし、動物病院によっても費用設定が異なります。
手術費用に関しては、どのくらい必要となるのか事前に動物病院に確認しておくことがポイントです。治療費などのトラブルを未然に防ぐためにも、事前確認は必須です。
また、手術にあたってはすべてを獣医に委ねることになります。愛犬はもちろんのこと、飼い主にとってもしっかりとお任せできる獣医さんを見つけておくのもおすすめです。
犬の発情期と去勢・避妊まとめ
オス犬の去勢手術、メス犬の避妊手術、ともに賛否両論あります。必要性としてメリットを重視するのか、それともデメリットを重視するのかは飼い主の判断に委ねられることになります。
費用やタイミングの問題もありますので、かかりつけの獣医さんがいるのであれば、しっかりと相談した上で判断するようにし、場合によってはセカンドオピニオンを加えて判断した方がいいでしょう。
手術することのリスクと、しない場合のリスクとを総合的に判断し、冷静に決めることが大切です。去勢・避妊するにしてもしないにしても、飼い主としての愛情が問われることには違いありません。
飼い主の独りよがりで、「めんどくさいから手術しちゃえ」というのではなく、何が愛犬にとってベストなことなのかを熟考した上で判断したいものですね。
