長年犬を飼っていると、ペットというよりも家族の一員として一緒に暮らしている人も多いのではないでしょうか。実際に犬は賢く、長年連れ添うとまるで人間の言葉を理解しているかのように振る舞い、感情ある表情を見せてくれます。
そんな、何でも理解し合えるような関係を築くことができる犬ですが、言葉がしゃべれないことに変わりありません。病気にかかってしまい、体に異状が出てきても人間に訴えることができないのです。犬も生き物である以上、人間のように病気や怪我というアクシデントに遭遇することもあります。
怪我の場合は、飼い主が注意してあげることで防ぐことは可能ですが、病気は飼い主が十分に気を使っていても発症してしまうことがあります。血統が悪く、先天的な異常で病気の種を持って生まれてくる個体もありますし、犬種によっては遺伝的な欠陥によって高い確率で先天性の病気を発症するものもあります。
しかし、同じ病気でも、早期に発見することができれば大事に至る可能性も低くなりますし、発見が遅れれば命の危険に晒されてしまうことにも繋がってしまいます。病気対策には早期発見が不可欠。
日頃のスキンシップから、愛犬の身に起きている小さな変化を見つけることができます。犬が罹患する病気にも様々なものがありますが、ここでは犬がかかりやすい代表的な病気についてご紹介します。
人間が犬の様子をこまめにチェックし、早めに病気に気づいてあげるようにしましょう。
参考:Petwell
皮膚疾患
近年増加している皮膚疾患。愛犬の皮膚疾患に悩む飼い主も相当な数に上ります。皮膚疾患というのは皮膚に起こるトラブルの総称で、症状も原因も様々。痒みや皮膚荒れ、脱毛といった症状が特徴ですが、その多くが何らかのアレルギーによるものです。
ただし、痒がっているからといってそのすべてがアレルギーというわけでもありません。細菌によるものかもしれませんし、ノミやダニが原因かもしれません。
また、免疫やホルモンの異常などによって皮膚疾患を引き起こされることもあります。愛犬が頻繁に痒がっているようなら、早めに動物病院へ連れて行き、適切な治療を受けましょう。
アレルギーが原因であればその原因を突き止め、アレルゲンを取り除いてあげるのも飼い主の役目です。フードやおやつに含まれる化学物質が原因であることも多いので、なるべく無添加で良質なものをあげるようにしましょう。
アレルギーの多くは化学物質か穀物が原因。予防として化学物質無添加フードのグレインフリーに切り替えてしまうのもおすすめです。
僧帽弁閉鎖不全症、心筋症などの心疾患
心臓疾患のひとつである僧帽弁閉鎖不全症は、犬の発症しやすい病気としてよく知られています。心臓には、血液の逆流を防ぐため、左心房と左心室を繋ぐ「僧帽弁」と、右心房と右心室を繋ぐ「三尖弁」という2つの弁があり、特に犬の心臓疾患では僧帽弁閉鎖不全症という病気が多くみられます。
もちろん、三尖弁閉鎖不全症という病気を発症する犬もいますし、それ以外にもフィラリアによる心疾患や心筋症などを発症することもあります。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、1歳の段階で3割もの個体が僧帽弁閉鎖不全症をもっているとも言われ、心疾患を発症しやすい犬種としてもよく知られています。シーズーやポメラニアンなどの小型犬や高齢犬なども発症しやすい心疾患です。
また、大型犬では心筋症を発症することが多く、ダルメシアンやドーベルマンなどの発症率が高いことでも知られます。心疾患は、事前に予防すること自体が難しいため、どんなに飼い主が神経質になっても、発症するときは発症してしまいます。
根本治療が難しい病気ですから、愛犬がいつもより元気がなさそうだと感じたら、早めに受診することをおすすめします。
椎間板ヘルニア
胴長な犬種で知られるダックスフントなどが発症しやすい椎間板ヘルニア。歩くたびに痛がったり、立てない・歩けないという症状が現れたら椎間板ヘルニアの可能性が高いかもしれません。
人間でも椎間板ヘルニアを患ったことのある人なら分かるかもしれませんが、その痛みも尋常ではありませんから、痛みに強いといわれる犬でもさすがに我慢できません。
放置しておくとそのままずっと歩くことができなくなるばかりか、脊髄が圧迫されて壊死を引き起こす脊髄軟化症や、おしっこをすることができなくなるなど、命を落とす危険もあります。
胴長の犬種は、どうしても脊椎の軟骨に異常を抱えてしまいやすいため、発症率も高くなってしまいます。ダックスフントと同様に胴長犬種で知られるウェルシュ・コーギー・ペンブロークなども椎間板ヘルニアの常連と言えるでしょう。
予防のためには、後ろ足で立つことをなるべく控えるなどの方法が一般的です。ピョンピョン跳ねる行動も椎間板ヘルニアを引き起こす要因になります。症状が軽ければ早期回復も可能ですが、手術が必要になるケースも多いのが特徴です。
外耳炎
後ろ足で耳を掻きむしったり、頻繁に首をブルブルと振りまくっている場合は、外耳炎の可能性があります。外耳道内の炎症によって痒みや傷みが引き起こされますが、重症化すると膿が溜まってニオイを発します。
放置してしまうと、外耳道が塞がってしまうことになりますし、耳血腫という病気に繋がる恐れもあります。垂れ耳の犬に多く見られる病気で、日常の衛生管理を怠ってしまうと発症の確率も高くなります。
ワクチン接種で予防できる感染症が原因の病気
犬にとって危険な伝染病もたくさんありますが、その多くはワクチン接種をすることで予防することができます。
- パルボウィルス感染症
- ケンネルコフ
- イヌ伝染性肝炎
- レプトスピラ症
- ジステンパー
- コロナウィルス感染症
- 狂犬病
これら感染症の中には、人間にも感染してしまうものもありますし、何より愛犬の命に直結するものでもあります。ワクチン接種は犬を飼う人の義務とも言えるものですが、個体によっては過敏症やアナフィラキシーなどの副作用を引き起こしてしまうこともあります。
接種後の激しい運動などは避け、接種後に少しでも異常が見られたら早めに獣医を受診しましょう。
強い口臭を感じたら歯周病かも?
犬の口臭には、人間と同じ口腔の病気である可能性が潜んでいます。最も多いのは歯肉炎です。犬種に関わらず3歳以上の犬で歯周病を持っている犬は約80%とも言われています。
歯周病になってしまうと歯がグラグラするようになり、固いものが食べられなくなってしまいます。犬の口臭に気が付いたら、まずは獣医の診察を受けましょう。
歯石の除去だけで済む場合もありますが、最悪の場合には麻酔をかけて虫歯になってしまった部分を抜歯しなければならいこともあります。
犬は歯石が溜まりやすいので、定期的にガーゼなどで歯磨きをしてあげることが必要です。
嘔吐した場合には症状と原因を細かくチェック
犬が食べ物を戻してしまった場合、その嘔吐の状況を細かくチェックしましょう。もし、ガツガツ食べた後に吐いてしまってもこの場合は問題はありません。これは、慌てて食べた結果、未消化の内に吐き出されるものですので、ほとんどの場合で心配は無用でしょう。
また、朝起きたばかりのころや食前などに黄色い液体や白い泡を吐く場合があります。これは、空腹が原因である場合が多いですから、食事を小分けにして与えたり、食事の感覚が空きすぎないようにすれば大丈夫です。
ただし、次の嘔吐の場合には注意が必要になります。繰り返して吐く場合、消化器系の病気か異物の誤飲、ウィルス性の感染症などが疑われます。嘔吐物に血が混じってたり異物が混じっている場合には、腫瘍や潰瘍の疑いや体内に異物が残っている場合があります。
いずれの場合にも、すぐに獣医の診察を受けさせることをお勧めします。
お尻を地面に擦りつける場合には?
犬は便意をもよおすと、お尻を地面に擦りつけるような行動を起こすことがあります。よくある光景ですが、それが便意のとき以外にも頻繁に行われるようであれば注意が必要です。
お尻を地面に擦るつける他にも、頻繁にお尻を舐めたり、尻尾を追うようなしぐさを見せるようであれば、肛門周辺になにかトラブルが起きている可能性があります。考えられる疾患としましては、トリミングなどで肛門のうを絞り出してもらう犬が多いと思いますが、その肛門のうが炎症を起こす肛門嚢炎が考えられます。
その他にも、肛門周辺のアトピー性皮膚炎や、サナダムシなどの寄生虫が発生している場合もあります。これらの中には、放置しておけばさらに症状がひどくなってしまう疾患もあります。
いつもと違う行動である場合、よく観察をして獣医に診せることが必要です。
目やにや涙が多いときも注意
犬種によっては、チワワやパピヨンなどのように瞳が大きく、目の病気になりやすい犬がいます。そうでなくても、年齢と共に目の周りの筋肉や機能が衰えて病気になってしまうケースが少なくありません。
犬も、睡眠中は瞬きをしないので涙が循環しません。そのため、目が覚めたときに目やにが付いている場合がありますが、これはさほど問題でないことが多いでしょう。
問題であるのは、日中に目覚めている場合でも目やにの量が多く、白く粘っこい目やにとなって、さらには膿のように黄色い目やにが目立ってくる…といった場合です。
目やにが発生する主な理由には、眼球の表面の角膜に傷があったり、炎症があったり、まぶたの内側の結膜異状などの理由があります。先に述べました、黄色く粘液性の膿のような目やにが出たり、目が赤く充血している場合にはドライアイである可能性もあるのです。
人間と同じような病気が犬にもあり、症状に合せて目薬や錠剤を処方されることもあります。しかし、これもまた手遅れになってしまうと手術が必要になってしまう場合もあります。たかが目やにと放置しないで、早めの対処を行いましょう。
まとめ
ここに挙げた疾患はごく一部の代表的な病気に過ぎません。目、耳、口腔、血液、循環器、呼吸器、消化器などなど…いつどのような病気を発症するかは、その犬によっても異なります。見た目は元気そうでも、かなり重症化するまで我慢してしまうのが動物の習性。
言葉で体調の変化を訴えれない犬だからこそ、その健康は飼い主の普段からの観察にかかっています。犬の普段とは違う行動に気が付いたら、すぐに観察を行い、病気を疑いましょう。
日頃からのスキンシップを心掛けると共に、相談しやすく信頼できる獣医さんを見つけておくことも必要ですし、絶対に安易な自己判断もしないようにしましょう。
ペットは飼い主に命を預けているのですから、飼い主には責任があります。愛犬の命を守れるのは飼い主だけです。犬が健やかに毎日を過ごすことができるよう、細心の注意を払って飼育してあげてください。
いざ愛犬が病気になった際、愛犬の気持ちを獣医さんに代弁することができるのも飼い主だということを、しっかりと肝に銘じておきたいものですね。