「これから犬を飼おう!」という人のお悩みは、まず「どんな犬種を飼おうか」となるかと思います。家族構成やライフスタイルからピッタリの犬種が見つかったら、次は犬の性別という問題が出てきます。
オスを飼うかメスを飼うか…。人間と同じように、犬の性別もオスとメスの2種類しかありません。
けれども、同じ犬種でもオスとメスとで性格や飼育方法が違うとしたら…?このように、オスにするかメスにするかで悩んでいる人もいるかと思いますが、実はオスがいいのかメスがいいのかという議論は、意外と多く交わされています。
もちろん、賛否両論ありますから、簡単に結論が出るほど簡単な問題ではありません。では実際問題、初心者にとって飼いやすいのはオスなのでしょうか?それともメスなのでしょうか?
犬のオスとメスの違いをピックアップしてみました。メリットとデメリットを比較しながら考えていきたいと思います。
人気があるのはどっち?
まずは人気から見てみましょう。すでに犬を飼っている人の間では、メスが人気のようでした。しかし、その差はわずかでしかありません。
メスを飼った人の意見を聞いてみますと、室内でも飼いやすい小型犬を飼っている人にメスを希望する人が多いようです。といいますのも、メスであれば足を上げて用をたすことがありません。
オスもしつけや去勢で足を上げないで用を足すようにさせることも可能ですが、そこまでしつけをすることができるか心配、といった声もありました。
また、メスの方が性格は穏やかではないか、といったイメージもあるようです。性格については犬種や個体差が大きいので何とも言えませんが、全般的にもメスは闘争心が薄い傾向にあるとも言われています。
ちなみに、ペットショップなどで購入する場合、メスは繁殖させることが可能であるためか若干お値段が高めに設定されているという特徴があります。
性格の違いは?
犬でも、性別によってある程度の性格の違いが見えるようです。オスの場合には、「甘えん坊の性格」と感想を持つ飼い主が多いようです。飼い主にべったりと甘えるような犬が多い。たとえば雷や花火といった大きな音にも驚き、飼い主に助けを求めるような行動をするオスが多いというのです。
また、飼い主以外の人間や他の犬に対しては縄張り意識を示すことが多いのもオスに多く見られます。そのため、相手に不快感を与えないような接触方法をしつける必要があるようです。
メスの場合、縄張り意識が弱い傾向にあるようで、大人しい性格が多いとされています。そのため「大人びている」と感じている飼い主もいるようです。避妊手術を行っていない犬の飼い主は、「年に2回の生理の時期には情緒が不安定になるようで、問題行動が多い」というコメントもありました。
人間の女性と同じように体調に変化があり、そのことが性格にも影響するようです。また、育てていく過程の中でこのような意見もありました。
- メスの方が比較的早く性格が落ち着く
- 気が強い傾向にある
- 性格が穏やかな場合が多いので、小さな子供がいる場合にはメスが良い
では、オスとメスのそれぞれのメリット・デメリットを個々で詳しく検証してみましょう。
オス犬のメリットとデメリット
メリット
- やんちゃで愛嬌がある
- 子供っぽさを失わないので飽きない
- メスよりも堂々とした風格がある
- ヒート期がないのでヒート時の手間が必要ない
1番目と2番目はどこか人間と共通しているようにも感じますよね。人間でも、男性はいつまでも子供っぽく、女性は落ち着いて精神年齢が高い傾向にありますが、それは犬も同様ということでしょうか。
オス犬のメリットの中で注視すべきはやはり4番目の「ヒート期がない」というところでしょう。ヒート―つまり生理がないため、お出掛け時でも他のオス犬のことを気にする必要がありませんし、犬用ナプキンなどを準備したりする手間がないのは大きなメリットと言えそうです。
デメリット
- ヒート中のメスを見つけるとコントロールが効かない
- マーキングするので家が汚れる
- マウンティングする
- 落ち着きがなくしつこい
以上のようなものが、主なデメリットとなります。デメリットの中でも、特に1番目と2番目についてはよく聞かれるデメリットですよね。
ヒート中のメスを目の前にすると発情してしまい、飼い主でもコントロールが効かなくなることがありますし、極端に食欲減退を引き起こすこともあります。
また、マーキングにしても片足を上げてあちらこちらにマーキングするため、家の中が汚れることもありますし、散歩中でも落ち着かなくて困るという人も多いようです。
メス犬のメリットとデメリット
メリット
- オスほどマーキングしない
- 落ち着いた性格
- マウンティングをあまりしない
以上が、巷間言われるメス犬のメリットです。メスは、オスのように片足を上げて尿を横へ飛ばすようなことをしないため、管理が楽だという声も多く聞かれます。
デメリット
- 年に2回ヒートがある
- 落ち着いた性格なので遊び甲斐がない
- ヒート中は他のオス犬に注意しなければならない
主なデメリットといえばこのくらいでしょうか。メス犬最大のデメリットとしては、やはりヒート期(生理)の問題ですね。
先にも述べましたが、ヒート中のメスはドッグランやドッグカフェなどでも入場を制限されるケースがほとんどですし、散歩中でもオス犬に気を配る必要があります。
また、ヒートの時期になれば犬用のナプキンなども必要となりますし、ヒート用パンツなどを履かせる必要もあります。ナプキン交換の手間もありますし、蒸れたりするので衛生管理も大事になります。
去勢の違い
以上のように、オスとメスの違いが出てくるといえばやはり去勢の問題に関してです。
メスの場合は避妊手術の明らかな理由として、生理の出血を始末する煩わしさから解放されるという点があります。さらに、避妊手術を行えば発情期を迎えることはなくなり、オスの犬から追いかけられることもなくなります。オールシーズンを通して、公共のドックランなどを利用することができるでしょう。
また、避妊手術を行わないままだと将来、卵巣嚢腫や乳腺腫瘍などといった病気のリスクがとても高くなります。費用もメスの方が高いので、オスと迷った場合にはこの辺も考慮に入れると良いかもしれません。
一方、オスの去勢でも病気のリスクを減らすことが可能です。また、去勢によってホルモンバランスが減少するため、足を上げてのマーキングやマウンティングといった行為が減少することを期待できます。
去勢の費用がメスよりも低いことは前述しましたが、オスの場合には切開することもありませんので、日帰りがほとんどで入院することもほとんどありません。
去勢や避妊手術は必ずしも行わなければならないものではありませんが、それぞれのメリットとデメリットは押さえておきましょう。
将来的に心配な病気は?
オスとメスの違いでかかりやすい病気があるとすれば、前述した生殖器に関する病気だけです。他の病気にかかりやすい確率は、オス・メスに関係なくほぼ同じということが発表されています。
さらに、同じ犬種のオスとメスの寿命を比較した場合、オスは12歳であったのに対し、メスは11.9歳とほぼ同じであることがわかりました。寿命に関してはオスとメスの違いというよりも犬種の違いが大きいようです。
一般的には大型犬よりも小型犬の方が長生きするといわれています。寿命は飼い方にも影響されるので、肥満傾向であったり室外で飼われている犬は寿命が短いというデータもあります。
オスとメスの違いまとめ
以上のように、オスでもメスでも、どちらにもメリットがあればデメリットもあります。強いて言うなら、頻繁にドッグランやドッグカフェに行くことがあるかどうか?ということを基準にするのもいいかもしれません。
メスであればヒート中はお出掛けできませんが、オスであれば時期を問わずお出掛けすることができます。そうしたひとつの基準に絞って、オスを飼うのかメスを飼うのか決めるのもいいでしょう。
また、病気にしても、オスとメスで大きな違いがあるわけでもありません。メス特有の子宮や卵巣の病気がありますが、オスも前立腺の病気があったりします。どちらにせよ、病気になりやすいかどうかという遺伝的・体質的な問題もあるため、オスの方がいいとかメスの方がいいということはありません。
ここでは『オスの特徴』と『メスの特徴』とに分けてお話をしていますが、実際には犬種による違いもありますし、飼育環境にも大きく左右されるため、実際の性格にはバラつきがあります。
例えば、オスはよく吠えると言いますが、実際はメスもよく吠えます。犬は吠えることが意思を示す行為となるため、メスだから吠えないということはありません。マウンティングにしても、優位性を示すために行うマウンティングならメスもよくすることです。
そして、オスがやんちゃでメスが落ち着いているという特徴にしても、各個体差によってバラバラですから、メスでもやんちゃな犬はたくさんいますし、オスでも落ち着いた性格の犬はたくさんいます。これは人でも同じですよね。
片足を上げでマーキングしまくるというオスのデメリットに関しても、しつけ次第でいくらでも改善が可能ですし、排尿時に片足を上げないオスもいます。
ヒート期がないため、飼いやすさという意味では確かにオスの方に分があるとも言えそうですが、極論を言ってしまうと、オスの去勢手術やメスの避妊手術をしてしまえば、オスとメスそれぞれのメリットやデメリットすら関係なくなってしまいます。
さいごに
犬は歴史や環境から犬種によって性格に特徴が出やすいという傾向にあります。しかしオスかメスかで性格や将来の病気など、育ち方の違いははっきりと差はありません。つまり性別による違いでどちらが飼いやすいかということは一概には言えないのです。
オスの方が飼いやすいのかメスの方が飼いやすいのかという議論がいつまでも平行線を辿っているのは、言い換えれば「結論を出すことのできない問題」ということだからです。病気や去勢に関しての多少の違いこそありますが、何よりも飼う当人との相性が一番ではないでしょうか。
また、飼いやすいかどうかはオスとメスという性別の問題ではなく、しつけの部分がとても大事です。飼いやすさの基準は、飼い主の心構えとしつけ次第ということになるのかもしれませんね。
ただし、先述したように、ヒートというものを基準にすると、やはりどちらを選ぶのかは飼い主次第、好み次第ということになります。
また、補足として付け加えておきますが、性別を基準にして選ぶよりも、優良血統にこだわって選ぶ方がいいかもしれません。
ブリーダーからの購入であれば、どのような性格の犬の血を受け継いでいるのか説明してもらうこともできますし、血統の中にどのような病気をした犬がいるのかも教えてもらえます。病歴や性格を把握できるため、それを飼育に活かしやすいというメリットがあるわけですね。
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