ペットショップへ行くと、ショーケースに入った犬などのペットが出迎えてくれる光景は、日本では当たり前ですよね。しかし、先進国の中で、日本のようにショーケースに入って売られている国は珍しいということをご存知でしょうか?
少なくとも、海外のペット先進国ではこうした販売方法はとられていません。多くの場合、ブリーダーや仲介業者からの購入がメインですし、保護施設から引き取って里親となる人もたくさんいます。
海外では、日本のペットショップのような販売方式というのは虐待と同義だとみなされている風潮すらあります。狭いケースに閉じ込められ、万人の視線に晒された環境で売られているなど、明らかに犬の精神的負担が重すぎます。
そのため、日本でも、そうした犬を見るのが可哀想だという理由でペットショップへ行かない人もいますし、敢えてペットショップではなく、直接ブリーダーから購入する人も増えつつあります。
売れ残ってしまうこともあるの?
ペットショップで売られているのは子犬ばかりですよね。なぜ子犬ばかりなのか?その答えは簡単です。「子犬の方が可愛くてよく売れるから」なのです。基本的には、ペットショップでは価格も安く購入できるということもあり、売れ残りというケースはほぼないとも言われています。
しかし、「ほぼない」ということは、「少しはある」ということになります。概ね、生後6ヶ月を超えてしまうと売れにくくなってしまうため、販売されることはなくなってしまうようです。
売れ残った犬はどうなるの?
もし販売されていた犬が売れ残ってしまったら?そんなことを想像しながらペットショップへ足を運ぶ人もまずいないかもしれません。
売れ残った犬というのは、そのペットショップの方で、ある程度は責任を負っているところが多いようです。スタッフが引き取ることもありますし、スタッフの友人や知人などに引き取ってもらうこともあります。
ペットショップによっては、民間の愛護団体等とタッグを組み、譲渡会などを通じて里親探しをすることもあります。
悲惨な末路を辿る犬も多いのが現実です
一昔前は、売れ残った犬は殺処分されるというのが定番とも言える状況でした。さすがに現在ほど動物愛護の声も高くなれば、そうしたことも減りつつありますが、それでも今なお、売れ残りの犬を殺処分してしまうペットショップも存在します。
もちろん、保健所へ連れていくこともありますし、里親が見つからなかったら売れ残り犬は殺処分されてしまう可能性というのは未だに大きいわけですね。
また、売れ残った犬を安く購入し、それを繁殖用に利用するという悪質なブリーダーも存在します。里親さえ見つからず、結果として殺処分かパピーミル送りになってしまうなど、まさに命の軽視としか思えませんよね。
たしかにペットショップとしても、商売という視点に立てば「仕方がない」となってしまうのでしょうが、それでは命を預かる者として失格ではないでしょうか?
すべてのペットショップが悪質なわけではありませんが、一部のそうした非情なペットショップのせいで、優良なペットショップでさえ同じような目で見られてしまうのはとても残念ですよね。
犬の販売システムを根本から変える必要性
現在、「ペットショップで購入するよりも譲渡会へ足を運ぼう」という声も多く聞かれるようになってきましたよね。もちろん、飼い主に捨てられて行き場の失った犬たちの里親になるという選択肢はとても素晴らしいものです。
また、ペットショップではなく、その犬のことを把握しやすいようにブリーダーから直接購入するという選択肢もまた素晴らしいものです。
しかし、もし仮に、犬の飼育希望者が一斉にペットショップを放棄して譲渡会やブリーダーからの購入に走ってしまったとしたら?そうなると、今度はペットショップで売れ残る犬が続発し、悲惨な末路を辿る犬が一気に増加してしまうという悪循環を生む結果になってしまいます。
一気に事態を改善させようとすると、どうしても歪みが生じてしまうのが世の常ですから、少しずつ少しずつ、システムを変えてかなければならないわけですね。少なくとも、まずは殺処分ゼロを目指すことが大切ですし、その上で、犬の販売システムの在り方、そしてパピーミル廃除のための議論も必要になるでしょう。
希望というのは、命あるものすべてに平等でなければなりません。そうした意味で、ペットショップで売れ残る犬のサポートについても、声高に叫ばなければいけない時代に突入したのではないでしょうか。
売れ残りの犬を購入するという選択肢だって十分にありです!
ペット先進国のドイツやイギリスにおいては、譲渡というシステムがとても浸透しています。日本では、殺処分という概念が定着してしまっていますが、ドイツでは殺処分ゼロ、イギリスでもよほど問題のある犬でなければ殺処分はしていません。
また、日本のようにショーケースに入れられて販売されているところなど、ドイツやイギリスにはありません。こうしたペット先進国に、いつの日か日本も肩を並べられるようになりたいものですが、欧米人に比べて心の豊かさの足りない日本では、なかなかそうした方向に舵をきれないでいるのです。
そこで、犬を飼うにあたってまず持っておきたい心構えとしては、
- 保健所や譲渡会で犬を引き取る
- ブリーダーから直接購入
- 敢えてペットショップで売れ残った犬を購入
という選択肢だけに絞り込むのも必要です。実際、ペットショップで売れ残った犬は価格も安くなっていますし、子犬でなければ嫌だというこだわりさえなければまったく問題はないはずです。
売れ残りの犬を飼うデメリット
ペットショップで売れ残った犬を飼う場合、単純な視点で見ればそれだけでメリットが一杯ですが、それなりのデメリットというものもあります。それはしつけと社会性の問題です。
ペットショップで6か月以上という期間を過ごした犬は、犬としての社会性も十分に養われていない可能性もあります。そうなると、他の人や犬との上手な接し方が分からず、混乱して危害を加えたりなどの問題行動が発生します。
それを覚悟の上で、しつけにおいても根気強さが求められることになりますから、その点だけは十分に認識しておきましょう。
まとめ
犬を飼うことに関して、子犬だから良い・成犬だからダメという基準はありません。新しい命を迎えるにあたって、まずは救える命があるのだということは知っておいてくださいね。
「犬を飼おう」と思った時点で、それはペットショップで売れ残った犬を始めとした「行き場を失った命」に、希望を与えることのできる立場に立ったのだということを自覚することも必要かもしれません。