犬は飼い主をとても大切に思っています。その絆を感じるのがコミュニケーションであり、撫でることです。頭を撫でるというのは、ご褒美に近いものがありますが、体を撫でることにはもう少し濃い意味があります。
人間でいうところの「手当て」と言いましょうか、人の手でマッサージをするように撫でることが犬のリラックスにつながるのです。
近年では愛犬のためのマッサージも人気があり、多くの愛犬家からも注目度が上がっています。何より、飼い主自らが愛犬にマッサージを施してあげることで、お互いの信頼関係構築にも役立ちますし、大事なスキンシップとして日課にすれば、愛犬の健康維持や病気の早期発見にも効果があります。
ここでは、愛犬のためのマッサージについてお話してきますね。
体がこわばってしまうのは犬も同じです!
肩や背中が凝ってしまうのは人間だけの症状だと思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。人間ほど明確に「肩凝り」などという症状ではないものの、犬の体も凝ってしまうことがあるのです。
運動不足が原因ということもあるでしょうし、ストレスが原因かもしれません。そうした要因で体が凝ってしまうことも珍しいことではないのです。
そのため、マッサージをしてあげて、心身ともにリラックスさせてあげるのが有効なのですね。
マッサージのメリット
犬は、飼い主に従順だと言われています。そのことは、犬を飼ってみると良く分かります。飼い主を慕っていることが良く伝わってきます。
犬の体に触れ、マッサージをするような感じで撫でてあげると、お互いに癒やされますし、信頼関係がより一層強くなっていきます。ここは大きなメリットと言えるでしょう。
血流アップで健康増進!リフレッシュに最適
犬にマッサージを施してあげることに伴う効果は、人間の場合と同じです。血流が良くなり、体の凝りを取り除くと共に、血管内の老廃物を排除する役割もあります。
何より、気持ちのよいマッサージによって、すっかりリフレッシュさせてあげることもできます。
メリットはまだあります。愛犬の体をチェックしながら触ることで、体の不調に気がつくことができるという点です。
例えば、皮膚などの外傷、肌荒れ、しこり(腫瘍)の有無などがあります。犬は毛で覆われていますので、ケガなどがあった場合、よほどでなければわかりません。撫でてあげることで、さまざまな体調の変化に気づけるのです。
私は秋田犬を飼っていました。撫でてあげる際に、外傷を発見したことが何度もありますし、小さいしこりがあることも発見し、早い段階での処置をすることができました。日々のコミュニケーションが本当に大切であることを実感しました。
マッサージによる相乗効果は多彩
マッサージには、以下のような相乗効果を期待できます。
- 飼い主とのスキンシップ
- 健康増進
- 病気の早期発見
- ストレスの軽減
- 人に触られることを嫌悪しにくくなる
1~4は、上でも述べたことですね。ここでポイントとなるのは5番目です。普段からマッサージを日課にしておくと、犬は人に触られることに抵抗を感じにくくなってきます。
これは、例えば散歩中やドッグランなどの施設で、他人が触ろうとして噛んでしまうといったような突発的な事故の防止にも繋がります。
さらに言えば、ペットサロンでのトリミングや、ペットホテルなどへ預けた際にスタッフを噛んでしまうというケースを失くすことにも繋がります。
「触られる=安全」ということを認識させれば、思わぬ事故を予防できるわけですね。
マッサージってどんな風にすればいいの?
ここまではマッサージの役割についてお話してきました。それについては大体ご理解いただけたかと思います。
では次に、実際のマッサージ方法についてお話します。とはいっても、そんなに難しいことはないので安心してください。
マッサージと聞くと、どこか専門的なイメージを抱いてしまうかもしれませんが、それほどこだわる必要もありません。大事なのは強く揉みすぎないこと。
やさしく擦る程度からスタートして、軽く圧迫させる程度でも十分です。マッサージは、耳の後ろから首筋、背中、お腹、四肢など、全身をマッサージしてあげましょう。
基本的に犬は顔を触れることを好まないので、顔はマッサージしなくても構いません。もちろん、顔を触られるのを嫌がらない犬であれば、顔のマッサージも有効です。
何度も続けていれば、そのうち愛犬が喜ぶ「気持ちいいツボ」も分かってきます。
犬が気持ち良いおさわりポイント5選
犬は、飼い主から触られることをとても喜びます。その中でもかなり喜ぶ「おさわりポイント」を5つ挙げてみました。
犬にも個体差があります。触られてうれしいところも嫌なところもあります。しかし、触ったときに変に嫌がったりすぐに立ち上がったりするような行動が見られる場合は、外傷などがないかを確認しましょう。何ともなければ、触られるのが嫌な所だと思った方がいいでしょう。
眉間から鼻の辺り
この部分は、犬自身がなかなか掻くことが出来ません。凹凸がありますので、しっかりした爪を持つ犬にはちょうど良い加減で掻くのが難しいです。
飼い主の優しい手で撫でてもらうことができたら、気持ちよさそうな顔をするはずです。
あごの下
犬が、あごの下を掻いている姿を見たことがあるかと思います。自分で掻くことができる範囲なのですが、飼い主に撫でながら掻いてもらうようにすることを好みます。撫でるというよりは、掻くようにして触ってあげると、とても喜びます。
耳の後ろから背中方面
犬もリンパが滞ってしまうことがあるようです。それをケアしてあげましょう。最初は優しく撫でるようにして、その後でマッサージするように指の腹で軽く揉むようにします。耳の後ろから背中にかけて毛の流れに沿って撫でたり揉んだりしてあげてください。
気持ち良くなって、すぐに横になり「もっとやって~」となります。
この時に注意したいのが、爪を立てないことです(特に耳はデリケートです!)。痛みを感じるとすぐに体を起こしますが、傷になってしまうこともありますので、注意してあげてくださいね。
お腹
飼い主に心を許している飼い犬ほど、お腹を見せて信頼していることをアピールします。知らない人や自分より低くみている人には絶対に見せたりしません。お腹は内臓がある場所なので、命にかかわります。だから信頼している人しか見せません。
もし、飼い犬がお腹を見せてきたときは、飼い主に信頼を寄せていて、甘えてかまって欲しいというサインです。優しくゆっくり撫でてあげてください。
その時の撫で方は、ひらがなの「の」の字を描くようにすることです。胃腸の働きを整えてあげるような気持ちで優しく撫でます。
あまりにも気持ちいいと、撫でられただけで、目を細め、ウトウトしてしまうこともあります。
しっぽの付け根
しっぽの付け根辺りは、コリが発生するのでしょうか。そこを撫でてあげるととても喜びます。軽くトントンと叩くような感じで触れてもいいでしょう。
ただ、あまり強くやり過ぎてしまうのはよくありません。力を加減してください。
犬のツボを解説した本やサイトなどもあります
犬のツボについて詳しく知りたい!もしくは、「どうせマッサージするなら気持ちいいツボを知っておきたい」というこだわり派の人は、犬のツボについて解説している書籍やサイトなどを参考にされることをおすすめします。
動画などでも解説していたりするので、そうしたものを参考に、自分たちなりのマッサージ方法を模索してみるのもおすすめですよ。
撫で方のコツ
撫で方にはちょっとしたコツがあります。
- 毛の流れに沿って(逆向きに撫でると伝わりにくいようです)
- 撫でる時は手のひらを使って
- マッサージを併用して行う時は、指の腹を使うようにする
- いきなり触らないで、犬の目線まで下りて(飼い主がしゃがんで)撫でてあげる
- 高い所から頭に手をやろうとすると、怖がることや攻撃だと感じてしまうことがあります。
- 最初に触るのは、できるだけ首辺りから背中にかけてが望ましい
犬は、飼い主が頭の上に手を持ってくるだけでも「怒られる」などと思って首をすくめてしまうことがあります。犬の気持ちからしたら「怖い」が先に来るのではないでしょうか。
ですから、飼い主が犬との目線の距離を縮めたり、声を掛けたりしながら撫で始めるようにするといいです。
撫でられるとうれしくなって、ころんと寝転がってしまう子もいます。優しさとリラックスした気持ちで接して撫でてあげてください。
ただし、犬が興奮状態にあったり、気が立っていたりする時に、手を出すのはやめておきましょう。いきなりだと噛みついたり吠えたりすることがあります(もちろんですが、経験ありです…)。
おさわりNG部分
犬にも触られたら嫌な部分があります。その部分は飼い主だとしても噛まれたりする可能性が高いです。注意してください(私は飼い始めの頃、そのことを知らずに触って噛みつかれました…)。
- 口の周り
- しっぽ部分とお尻の辺り
- 肉球(嫌がらない子もいる)
口周り
口の周りは、子犬時代から歯磨きの時に口に触れる練習を積み重ねていれば、そんなに嫌がったりはしない部分です。しかし、食物が入る部分ですので、触られたくないと考えている部分だということは理解して欲しいと思います。
また、口先を掴むようなことをすると、犬は愛情ではなく服従と捉えます。そうなると、反抗しようとすることが考えられますので、飼い主がケガをしてしまうことにも繋がります。
しっぽ部分とお尻の辺り
しっぽは犬が感情を表現する箇所です。うれしいと勢いよく振りますし、怖いとだらりと下げますよね。だから、触ってもいいかなって気持ちになるのですが、犬が最も触って欲しくない部分です。特にしっぽの先の方は要注意です。撫でるような優しい感じのさわり方でも嫌がり、噛みつこうとさえします。
また、お尻の周りも触られたくありません。生殖器も近くにありますので、余計なのでしょう。汚れているなどの特別な理由がない限り、触らないようにしましょう。
肉球
肉球は触っても嫌がらない子もいますが、触ったら本気で嫌がる子もいます。ですから、飼い犬はどうなのかな?と最初のうちに把握しておくといいでしょう。
ただし、むぎゅっと握るようなことはしないようにしてください。痛みを感じるようです。
愛犬にマッサージするとなぜか飼い主もリフレッシュするという不思議
愛犬のマッサージをしていると、なぜか飼い主まで心地よい気分になってしまいます。
目の前で気持ち良さそうにしている愛犬を愛おしく感じるということもあるかもしれませんが、もしかしたらその瞬間は愛犬と一心同体になっている証拠かもしれませんね。
もちろん、愛犬が嫌がっているのに強引にマッサージをするのはNGです。それでは一心同体どころか信頼関係の崩壊を招いてしまいますので、要注意です。
マッサージをするなら、いかに愛犬が喜ぶかを重視するようにし、飼い主による一方的な押し付けにならないようにしたいものですね。
ましてや嫌がっているということはストレスも同時に感じていることの証拠ですから、好ましいことではありません。
慌てず余裕を持ってマッサージを
マッサージをされている愛犬は、飼い主を信頼しているからこそ体を預けてくれているわけです。マッサージをする場合は、時間にも十分に余裕を持って、いたわるように行いましょう。
時間もないのにバタバタとマッサージをしても、犬も落ち着かないでしょうし、この場合でもストレスの元になってしまいます。
また、これはあまりあり得ないことかもしれませんが、マッサージをする飼い主が極度に緊張していてもよくありません。そうした感情に犬は敏感ですから、逆に警戒してしまってリフレッシュどころの話ではなくなってしまいますよね。
犬も飼い主も、両方がリラックスできる環境で行うのがベストです。
まとめ
犬は、古来からの習性により飼い主に従順なところがあります。ですから、コミュニケーションを求めて、甘えてくることも多々あるでしょう。その気持ちをしっかり受け止めてあげて、犬が喜ぶおさわりポイントを中心に触ってあげてください。
しっかりとコミュニケーションが取れれば、今まで以上に仲良くなれますし、信頼関係も強固な物となるでしょう。撫でる時は犬に痛みや不快感を与えるようなさわり方はせず、毛の流れに沿ってゆっくり愛情を込めてあげてください。
マッサージをするのは、健康な犬ばかりではなく、高齢であまり動かなくなった犬にも効果があります。動かなく(動けなく)なった犬の体はとてもこわばりやすいので、体中が凝っている状態になっています。
適度なマッサージをすることは健康面で役に立つので、その犬の寿命を延ばしてあげることにもつながりますし、凝りによる違和感を解消してあげるのにもおすすめです。
ただし、体調を崩してグッタリしている犬には逆効果になることもありますので、その点だけは十分に気を配ってあげましょう。
人間でも、具合の悪いときにマッサージなんて考えられませんよね?それと同じで、犬も具合の悪いときにマッサージをされると、逆に不快感抱いてしまい、病気以外のストレスを抱えてしまう原因になりかねません。
マッサージは健康な時にこそ意味があるということは知っておいてください。