ご存知のように、犬には縄張り意識が強いという習性があります。これは野生の本能とも呼べる習性で、自分のテリトリーとして認識している範囲に外部から人や他の犬が入り込むと追い出そうと威嚇したりする習性のことですね。
縄張りというと、野良犬や屋外飼育の犬に多いものと思われがちですが、室内犬でも縄張り意識は持ち合わせています。
縄張り意識の強い犬同士であれば喧嘩に発展してしまうことも珍しくありませんし、室内犬でも多頭飼いをすると縄張り争いによって喧嘩をすることもあります。
縄張り意識の現れ―マーキング
犬に元々備わっている縄張り意識ですが、その代表的な行動がマーキングですね。尿のニオイをあちらこちらに付けることで、そこが自分の縄張りであることを主張しているのです。
マーキングというとオスがするものというイメージがありますが、メスもマーキングをします。マーキングが犬の習性であることはもはや仕方のないことですが、マーキングすることを当たり前にしてしまうと他の犬と喧嘩したり他人を噛んでしまったりすることになります。
できることなら、縄張り意識を持たせないのが一番いいのですが、何か良い対策はないのでしょうか?
縄張り意識をゼロにすることはできませんが喧嘩や攻撃性を抑えることはできます
縄張り意識による喧嘩や、他人に対する攻撃的な一面を抑え込むことはできます。まず重要なことは、犬にとって飼い主がリーダーであることです。縄張り意識が強いということは、別の視点からみればその犬自身が、「自分がリーダーだ!」と、認識してしまっている可能性があります。
自分の群れを守るための防衛本能が、喧嘩や攻撃性に現れてしまうわけですね。飼い主がリーダーであれば、当然ながらそこは群れ全体のテリトリー、つまりはリーダーのものだという認識に変わるのです。
群れのリーダーが飼い主であることを認識すれば、そもそも自分の縄張りを主張する必要すらありませんから、自然に縄張り意識も改善されて行きます。
どうしても他の犬と喧嘩をしそうになる場合の対処
普段の散歩においても、縄張り意識の強さから犬同士で喧嘩に発展してしまうこともあります。人間でもそうですが、周囲を威嚇するというのは不安感の現れであり、言い換えれば臆病な性格だと言えるのです。
喧嘩に発展する場合、こちら側から威嚇を始めるか、相手から威嚇をされるかのどちらかになります。いずれにしても、万が一散歩ですれ違った犬と喧嘩になりそうになったら、飼い主は強い態度で犬に接する必要があります。
たとえ相手から威嚇された場合であっても、飼い主が自分の犬を守るような行動を起こしてはいけません。
「自分は守られている」と勘違いしてしまい、飼い主のいる前で今度は他の犬に対して攻撃的になってしまう可能性もあります。普段1人ではおとなしいのに、仲間がいると調子に乗ってしまうのもどこか人間と似ていますよね。
飼い主は犬を守るのではなく、喧嘩に応じようとしている犬に対して「いけない!」と、強い姿勢で接しなければいけません。その際、リードは強く引っ張るようにし、威嚇することはいけないことだと教え込まなければなりません。
場合によっては、そうした時点で散歩を中止にしてしまうくらい強い姿勢でもいいでしょう。散歩といえば犬にとってはお楽しみのひとつですから、「吠えたりすれば散歩ができない」と意識付けることで、自然に“威嚇癖”が改善されます。
多頭飼いで犬同士が喧嘩してしまう場合
犬同士の喧嘩は何も散歩ばかりではありませんよね。多頭飼いの場合でも同居犬同士が喧嘩してしまうことがあります。飼い主心理としては仲良くしてほしいのに、同じ環境で暮らす犬同士が喧嘩してしまうのはとても不本意なことです。
しかし、同居している犬同士の喧嘩に関しては無理に止める必要はありません。なぜなら、犬の群れには「順位」が必要だからです。犬は群れの中の順位によって、群れにおける自分の立ち位置を把握しています。言い換えれば「上下関係」ですね。
一度喧嘩をしてしまえば上下関係も決まるので、その後喧嘩らしい喧嘩もなくなります。特に、リーダーである飼い主が喧嘩に勝利した方の犬を目一杯褒めてあげることで、勝った方も負けた方も自分の立ち位置を把握しやすくなります。
逆に、勝利した犬を激しく責めたてたり怒ったりしてしまうと、いつまで経っても犬同士の順位が定まらず、ついには飼い主のいないところで喧嘩するようになってしまいます。
できることなら、同居犬同士横一列で仲良くしてくれるのが理想なのですが、万が一喧嘩になってしまった場合は、順位決めのための習性であることを認識しておいてあげるといいでしょう。
まとめ
犬のトラブルで多いのが、犬同士の喧嘩です。本来は野生で生活していた動物ですから、人間のように話し合いで解決するということはできません。
縄張り意識から派生してしまう喧嘩に対しても、飼い主のしつけによって改善させることは可能です。無暗に喧嘩しないことを覚えてしまえば、ドッグランなどへ行っても他の犬を攻撃したりする心配も低くなります。
犬や人に慣らせるのもポイントです
攻撃しようという意識が芽生えてしまうのも、別の視点で考えると、「他の犬に慣れていない」「人に慣れていない」ということも言えます。犬としての社会性が養われていないことが原因でもありますが、まずは、「他の犬がいて当たり前」「飼い主以外に人がいて当たり前」という意識を持たせることも必要です。
すぐに喧嘩してしまうということは、相手の犬に対してどう接していいか分からないという不安があるからです。子犬なら母犬が教えてくれることですし、兄弟たちと遊びながら覚えることができます。
しかし、生後早い段階で母犬や兄弟と引き離されてしまうと、そうした社会性を養う機会も奪われてしまうため、キレやすく、すぐに喧嘩するような問題犬になってしまうわけですね。
もし、母犬や兄弟たちと早い段階で引き離されてしまった子犬であれば、飼い主が愛情を持ったしつけを行って、社会性を芽生えさせてあげなければなりません。子犬の段階から飼い主がリーダーシップを発揮していれば、縄張り意識を強く抱くこともなくなりますし、それに伴い喧嘩も予防することができるのです。