犬の耳掃除、皆さんはどれだけ意識していますか?すでに犬を飼っているという人なら当たり前のように意識されていると思いますが、これから犬を飼おうと考えている人に限って言えば、耳掃除に対する関心もそれほど大きくはないかもしれませんね。
実際、犬の耳掃除については、「飼ってから初めて知った」という人も多いようです。動物病院で「耳掃除をしていない」と指摘されたり、ペットサロンで「耳掃除はどうしますか?」と聞かれたりして、初めて耳掃除の必要性に気付くというケースもよくあります。
耳のお手入れをしていないと、外耳炎になってしまったり、耳の病気を見逃してしまったりもしますので、しっかりチェックしてあげてください!
この記事では、犬の外耳炎をはじめとした耳の病気について(症状など)と、耳掃除のやり方について紹介していきたいと思います。
耳の病気を疑うべき犬の様子
犬は、耳に何らかの不具合が起こった場合、耳を掻くという症状だけではありません。その他にも注意が必要な仕草や様子があります。
- 首の後ろ(首周辺)あたりを掻いている
- 首や頭を振っていることが多い
- 耳の中が見てわかるほど汚れている
- 耳からニオイがする
- 耳を触ると嫌がる
などです。犬種によっては、耳まで足が届かず、首のあたりを掻いている場合があります。
また、耳に何か付いていたり、かゆみなどを感じている場合は首や頭を振っていたりすることが多くなります。こういった症状が見られた場合は、耳をチェックしてあげましょう。
耳のチェックポイント
- 耳の中に異物がないか(耳の付近も)
- 異臭はしていないか
- 耳垢はついていないか
- ダニやノミなどの害虫がついていないか
- 水分が付着していないか
水分の付着に関しては、特に垂れ耳を持つ犬種に注意が必要です。なぜなら、シャンプー後でも耳の中に水分が残ってしまっている場合があるからです。そこから雑菌が繁殖して外耳炎などを引き起こすことがあります。注意してください(この場合もニオイがしてきますのでわかりやすいです)。
頭を振ったり、耳のあたりを触っているようなら、まずは耳の状態を見てあげるようにしましょう。ニオイを嗅ぐのがポイントです!
犬がかかりやすい耳の病気
犬の耳の病気で多いと言われているのは、耳道に炎症が起こってしまうものです。炎症が起こってしまう原因は、細菌や真菌といった菌類だけでなく、耳ダニなどの害虫によるものなど、さまざまなものがあります。耳道に関わる病気を紹介します。
外耳炎
犬の耳の病気で一番多いのが外耳炎。耳の中でも鼓膜の手前までを「外耳」と言いますが、この部位に炎症が起こってしまう病気です。原因として挙げられるのが、細菌や真菌などの感染、アレルゲンに触れたとき、ホルモン異常などがあります。
外耳炎の症状は次の通り。
- かゆみ
- ニオイがする
- 耳垢が溜まる
- 耳や首あたりをしきりに掻く
慢性化しやすいので、早めの治療が必要な病気です。
また、垂れ耳を持つ犬種は、耳が垂れているために耳の中で湿気がこもりやすいです。そのため、耳垢が溜まりやすく菌の繁殖が進んで炎症を起こしやすいといわれています。普段のスキンシップの中に耳のチェックを取り入れてあげるといいでしょう。
また、「垂れ耳」の犬種の場合には、どうしても湿気が耳にこもりやすいため、外耳炎にかかりやすくなってしまうようですので、普段から気をつけてあげてください。
症状が進行してくると、痛みを感じるようです。耳を触ることを嫌がります。うちの犬がかかったときは、何度も掻いているのとニオイで気がつきました。酸っぱさのある臭味とでもいいましょうか。とにかく臭いました。それで耳を見てみたら、黒っぽい茶色の耳垢が出ていて、それを取ってやったら皮膚が赤くなっていました。
中耳炎
鼓膜の奥に中耳・内耳続きますが、中耳で炎症を起こした状態が中耳炎です。というのは、耳の奥にある「中耳」と呼ばれている部分に炎症が発生した状態を指しています。
原因は、外耳炎から来ていることがほとんどです。外耳炎が進行して中耳にまで及んだということです。
症状は以下の通り。
- かゆみ
- ニオイがする
- 耳垢が溜まる
- 耳や首あたりをしきりに掻く
- 聴力の低下
などがあります。人間の中耳炎と同じで、ひどくなると鼓膜に穴が空いてしまいます。そうなれば、痛みもひどいでしょうし、耳から膿が出てきます。
鼓膜に穴が空いてしまった場合は、外科手術をしなくてはいけなくなるため、治るまでに時間がかかります。それに、愛犬にかなり痛い思いをさせてしまうことになるでしょう。
鼓膜は耳の中に異物が入っても破れてしまうことがありますし、ケガが原因でということもあります。間違った耳掃除をしてしまうことでも鼓膜を傷つけたり破ってしまったりということもありますので、耳掃除も要注意です。
内耳炎
耳の奥の内耳と呼ばれる部分で炎症を起こした場合、内耳炎となります。内耳は、聴覚(聴神経)と平衡感覚(前庭神経)に関係する部分があります。内耳炎を起こしてしまう原因は、外耳炎の悪化だけでなく、腫瘍の場合もあります。
内耳にある神経が関わっているため、体に大きく症状が出ます。聴神経に炎症が起きた場合、難聴の症状が見られます。前庭神経に炎症が起きた場合、眼振(目玉が小刻みに震えてしまう症状)や歩行の異常などの症状が出てきます。
うちで初めて飼った犬が、腫瘍で亡くなったのですが、その時、内耳炎を起こしていたようです。動けなくなってしまうだけでなく、目玉が震えたり、首がだらりとしていたりということがありました。見ていられないくらいひどかったです。
耳血腫
耳のひらひらした部分を耳介と言います。そこに、血液などが溜まって腫れ上がってしまうことを耳血腫と言います。原因は、他の動物とのケンカで負傷(打撲など)や、免疫異常などです。
症状は以下の通り。
- かゆみ
- ニオイがする
- 耳垢が溜まる
- 耳や首あたりをしきりに掻く
- 聴力の低下
などです。腫れを見て、「膿を出してあげよう」などと思わないでください。医師が治療で行う場合は感染症などに気をつけて行いますが、素人の場合はそこまでの知識がないので、悪化させてしまうことが考えられます。
犬が爪で傷をつけてしまわないように「エリザベスカラー」をつけてから受診することをおすすめします。
耳疥癬(みみかいせん)
耳疥癬は、犬の耳の中だけで繁殖するダニが発生してさまざまな症状を引き起こします。原因は、ミミヒゼンダニの寄生です。症状は以下の通り。
- かゆがる
- 耳の黒ずみ
- 耳からニオイがする
- 耳垢が溜まる
- 首や頭を振る
などです。散歩などで草むらなどを歩かせたりすることで、どうしても耳に付いてきてしまいます。耳垢をキレイに掃除しておくなどの衛生面に気をつけてあげましょう。
うちでも、キャンプに連れて行ったことがありました。その1週間後、「異様に耳を掻くなぁ」と思っていたら、耳のところでなにやら動くものが!「ダニだ!」と思ってすぐに受診をしました。駆虫薬を使いました。ダニが完全に死滅するまで何度も病院通いをするはめに…。衛生管理が本当に大切だということを実感した一件でした。
耳の病気を予防するために愛犬の耳掃除をしよう!
耳の病気は、耳を清潔にしておくことが1番の予防方法です。その中でも耳掃除は、注意して行わなくてはいけません。
耳垢を放置しておくと、外耳炎や中耳炎などになりやすく、慢性化してしまう可能性も高くなってきます。ダニがいる場合も見逃してしまうでしょう。ダニがいた場合、特に気をつけなくてはならないのが、他の犬への感染です。接触感染しますので、ダニを発見後は隔離をします。完全に駆除できるまで隔離は解かないでくださいね。
犬の耳掃除は動物病院やペットサロンでしてもらうこともできますし、飼い主が自らすることもできます。基本的に、耳掃除は医療行為ではありませんので、どこかでしてもらおうが自分でしようが、それは自由です。
ただし、やはり初心者であれば、最初のうちは動物病院やペットサロンへお任せしてしまった方がいいでしょう。傍から見ている限りでは、結構簡単そうなイメージのある耳掃除ですが、これが慣れないとなかなか難しいものでもあるのです。
慣れない人が耳掃除をすると、犬が痛がって暴れたりすることもありますし、そうなれば耳の中を傷つけてしまうことにもなりかねません。かといって、実際にチャレンジしてみないことには慣れることもできませんから、動物病院やペットサロンの耳掃除の仕方を参考にしながら徐々に身に付けていくようにしましょう。
耳掃除で用意するものと手順
まだ耳掃除に慣れないうちは、肉眼で確認できる外側の部分(耳介)を中心に耳掃除をするのがおすすめです。いきなり動物病院やペットサロンのように手際よくできるものではありませんので、できる部分から徐々に慣れていきましょう。
まず、用意しておくべきアイテムは、イヤークリーナーとカット綿です。
最初はこの2点を用意し、カット綿にイヤークリーナーを染み込ませて耳の外側だけを掃除してあげましょう。この時、絶対に擦ったりしないようにしてください。
犬の耳の皮膚は非常に弱いため、擦ったりすると傷ついて出血することもあります。ゴシゴシと擦るのではなく、ポンポンと汚れにイヤークリーナーを染み込ませるような感覚で掃除をしましょう。
イヤークリーナーを染み込ませてふやかすことで、汚れを浮かせて取ることができます。
耳の中の掃除はより慎重に行いましょう
耳介の掃除が終わったら、いよいよ耳の中の掃除です。耳の外側の掃除では「擦らないこと」が唯一の注意点でしたが、耳の中を掃除する場合はいくつか注意点があります。
- 人間用の耳かきなどは使用しないこと
- 綿棒の使用は避ける
- 耳介と同様に擦りすぎには注意する
耳の中を掃除すると聞くと、人間の使用するような耳かきなどを用いるのか?とイメージしてしまいがちですが、上でも述べたように犬の耳の中はとてもデリケートですし、万が一犬が暴れた場合に大ケガをしてしまう恐れもあります。
また、綿棒は汚れを奥へと押し込んでしまうため、耳掃除には向きません。綿棒を使用するのであれば、耳の外側の掃除で使用するようにした方がいいでしょう。
耳の中の掃除は、ペットサロンなどではカンシを用いて行うことが多く、耳掃除に慣れている飼い主さんの多くもカンシを使用しています。しかし、初心者がいきなりカンシを使用するのはやはり難しいかと思います。
手軽に耳の中の掃除をする方法
カンシは、ペットショップや通販でも販売されていますが、ここではカンシを使用しないで耳掃除をする方法をご紹介します。
その方法とは、イヤークリーナーを直接耳の中へ入れて汚れを落とすという方法です。安全面を考えれば、まずはこの方法からスタートすることをおすすめします。
まず、耳の中にイヤークリーナーを入れます。イヤークリーナーは、数滴垂らすのではなく、ビュッ!と勢いよく流し込みます。イヤークリーナーを流し込んだら、耳の根元の部分をマッサージするように揉みます。
揉むときは、耳の中からクチュクチュと音がするように揉みましょう。そうすることで、耳の中の汚れにイヤークリーナーが染み込み、浮き上がらせます。
ここで、「耳の中に残ったイヤークリーナーと汚れはどうするのか?」という疑問が湧いてきますよね?
垂れ耳の犬種は特に耳の中が蒸れやすい構造になっていますので、定期的な耳掃除は欠かさないようにしましょう。さらに細かいことを言えば、犬種によっては耳の内部にまで毛が生えています。耳の内部に毛が生えているということは、構造的に汚れが溜まりやすいということになりますので、できれば毛抜きすることをおすすめします。
耳の毛抜きは専用のものが販売されていますし、ペットサロンなどにお願いすれば対応してくれます。汚れが溜まれば雑菌も繁殖しやすくなりますから、外耳炎などの原因にもなってしまいます。そうした万が一に備えるためにも、耳の毛抜きは検討しておいた方がいいでしょう。
犬の外耳炎などの病気と耳掃除のやり方まとめ
耳の病気は、進行してしまうと犬が辛い思いをします。見ている飼い主も本当に辛いです。だから、耳だけでなく首や頭をいじるような仕草が見られたら、すぐに耳を見てあげてください。早期発見が早期完治につながります。
耳は、聴覚だけでなく平衡感覚を司る器官です。様子見や放っておくなどが長引けば長引くほど歩行などにも影響を及ぼしてきます。愛犬のことを思うなら、耳の症状が見られたらすぐに動物病院へ受診することをおすすめします。
また、犬の耳掃除も、慣れれば手早く行うことができるようになります。最初のうちは、犬も嫌がるでしょうし、飼い主も耳掃除に慣れていませんから、戸惑うことの方が多いかもしれません。
安全面を考えるのであれば、やはり動物病院やペットサロンでしてもらうのが一番ですが、耳掃除のたびに毎回お願いしていては時間も費用もかかってしまいます。せめて耳掃除くらいは飼い主自ら行うようにしておく方が、よけいな手間も出費も防ぐことができますよね。
動物病院であれば、獣医さんがレクチャーしてくれるはずですし、動物病院で使用しているイヤークリーナーを購入することもできます。
一番の注意点は耳の中の皮膚を傷つけないこと。これが最優先の注意事項になります。耳掃除を嫌がってしまう犬であっても、飼い主が耳掃除に慣れてくれば自然とおとなしくしてくれるようにもなるはずです。
おとなしく耳掃除をさせてくれた後は、褒めることはもちろん、ご褒美のおやつなどを忘れずに与えてあげましょう。