愛犬の健康管理に必要な情報のひとつとして、体重を知っておくことは大切です。犬の体重が増えたとか減ったとかというのは、見た目ですぐに分かるものでもありません。特に、いつも一緒に暮らしている飼い主にとっては、体型の変化にも気付きにくいものですよね。気が付いたら、「あれ?うちの子太った!?」と、いうのがほとんどのケースではないかと思います。それだけ、毎日一緒にいるとその変化にも気付きにくいわけですね。
犬のダイエットというのも、最近ではすっかりお馴染みになった感もありますよね。ある調査によると、獣医師を対象にしたアンケートで、犬の肥満が増加傾向にあると答えた獣医師は60%以上にも上っているそうです。
犬が肥満になる原因の多くが生活習慣。そう、我々人間が肥満になってしまうのと同じ原因があるというわけですね。もちろん、肥満になれば体にも負担がかかりますし、犬の体調管理にも悪影響を及ぼしてしまうことになります。
ここでは犬の肥満の原因と予防、そしてダイエットについてお話していきます。
愛犬が肥満になる原因は?
犬が肥満になる原因は様々。しかし、その原因の多くが生活習慣の乱れに伴うものです。では、その原因の根本とは何かといいますと、そこはやはり飼い主の管理不足によるものなのです。
- おやつばかり与えてしまう
- 気付かぬうちにフードの量を間違えている
- 満腹に見えないのでフードの量を増やして与えている
- 人の食べ物をついつい与えてしまう
- 運動不足
こうして挙げてみるとよく分かりますが、大別すれば食事の管理と運動の管理だけですよね?このたった2つの要因が、犬の深刻な肥満を生み出しているのです。
これは例外!去勢や避妊で肥満になる?
上記以外で犬の肥満原因を挙げるとすれば、『去勢』や『避妊』による肥満です。なぜ、去勢や避妊をすると肥満になりやすいのかというと、ホルモンバランスの乱れに加えて基礎代謝にも変化が出てしまうからです。
例えば、オスであれば発情であるとか、メスであればヒートであるとか、繁殖行為に繋がるエネルギーそのものが必要なくなってしまうのです。しかし、これも”特別な事情”というわけでは決してありません。
消費するエネルギー量が低下しているにも関わらず、これまでと同じ量のフードを与えてしまうことが肥満原因のひとつになっているのです。この場合も、大別すれば食事の管理不足ということになりますよね。
愛犬が肥満かどうか、簡単チェック!
愛犬を見て、肥満かどうかを判断することができますか?犬種によっては、がっちりした子もいますし、細身の子もいます。このように個々によって体型はさまざまです。だから、見た目だけで判断するのは難しいということになります。適正体重を見ることがいかに大切かお分かりになると思います。
しかし、そうは言ってもなかなか時間が取れない飼い主さんもいれば、計算が面倒に思われる飼い主さんもいらっしゃるでしょう(私は最初、計算が面倒に思いました)。そのような時、簡易的に判断できたらどうでしょう。
見た目だけでは判断することは難しいです。でも、『愛犬の体を見て・触れて』という方法を使えば、簡易的ではありますが、愛犬が肥満かどうかの見極めができます。
簡単肥満体型チェック
- 胸のあたりを撫でて肋骨が感じられるか
- 骨盤を触って感じられるか
- 真上及び横から見て、腹部のくびれがあるか
- 全体的に丸い感じはないか(毛の部分を入れない)
- 昨年と比べて体重が増えていないか
- 避妊や去勢手術をしてから食事量を変えていない
チェックリストの1と2は、触ってわかります。骨がしっかりわかるかどうかで判断します。触って骨の状態がわかれば、肥満ではないと判断して良いと思います。しかし、肋骨や骨盤がわからない場合は、肥満に当たる可能性が高いです。
くびれも実際に手で触ると良くわかります。毛が多くてわからないという場合は触診が有効です。
もっと詳しく!愛犬の適正体重を把握するには?
肥満によって体調を崩し、苦しむ愛犬を見るのは辛いものです。肥満を放置していたことが原因ですから、それを悔やむ飼い主さんも多くいらっしゃいます。犬が肥満になっているのかそうでないのかを判断するためには、まず犬の適正体重を知っておく必要があります。意外なことですが、実は愛犬の適正体重すら知らずに飼育されている飼い主さんも多いようです。
愛犬の健康管理をする上で、犬の適正体重を知っておくことがどれだけ重要なことかは言うまでもないことです。しかし、それすら知らないもしくは知ろうともしない飼い主さんが多いのには驚かされますし、嘆かわしいことです。
愛犬の健康を考えたら、まずは適正体重を知っておきましょう。体重の変化を知るということは結構大切なことです。体重が増えるということは、思っていた以上にごはんを与え過ぎていたということもありますし、逆に体重が減ってしまう場合は、体調に何らかの異変を起こしているかもしれません。
体重は、単に増えたとか減ったということだけでなく、飼育環境や飼育方法が適切だったかどうかを知ることもできますし、犬の体調変化のサインになっていることもあります。
標準体重=適正体重ではない
愛犬の標準体重を知りたければ、今ではネットで簡単に検索できますし、動物病院などでも教えてもらうことができます。標準体重というのはその犬種の基準であり、愛犬の健康管理の目安になりますので、ぜひ知っておくようにしましょう。
また、犬の適正体重というと、「ああ!図鑑とかに書いてある体重のこと?」と思われる人もいるかもしれませんが、実はそれは適正体重ではありません。図鑑などに書かれている犬種ごとの体重は、あくまでも目安です、平均的かつ標準的な体重のことです。
「パーフェクトなスタンダードモデルはこのくらいですよ」というものでしかありません。基本的に、同じ犬種であっても遺伝的な部分にも左右されるため、骨の太さも違えば骨格だって異なります。本来の適正体重というのは、例え同じ犬種であっても、微妙に異なっているのが普通なのです。同じ人間でも骨太の人もいれば骨が細い人もいるのと同じですね。
BCSで肥満度を判別
そうしたことを踏まえて適正体重というものを考えると、その犬種の標準的な体重の+10%程度が、肥満を判別するひとつの目安になるとされています。標準体重が5キロの犬種であれば、+500グラム以上からが肥満の入り口になるということになります。
また、犬の体型でも肥満度を判別することができます。これを、BCS(ボディ・コンディション・スコア)と呼びます。BCSは、BCS1~BCS5までの5段階評価になっており、最も理想なのが真ん中のBCS3となります。
BCS3よりも低ければやせ型、高ければ肥満傾向ということになります。
BCSによる評価が個人では難しいという場合は、動物病院に相談するのもおすすめです。このBCSに関しては、環境省の発行する「飼い主のための ペットフード・ガイドライン」というパンフレットにも書かれていますので、ぜひ一読してみることをおすすめします。
犬種別の標準体重
以下に、主な犬種の標準体重を掲載しておきますので、ぜひ愛犬の健康管理に役立ててください。
犬種名 | 理想体重(kg) | 特記事項 |
---|---|---|
チワワ | 1.5~3 | ― |
シー・ズー | 4.5~7.3 | ― |
パグ | 6.3~8.1 | ― |
ダックスフント (スタンダード) | 9 | ミニチュアは胸囲30~35cm、カニンヘンは胸囲30cm未満が基準 |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル | 5.4~8 | ― |
パピヨン | 5 | 体重よりも体高重視(体高28cm以下) |
トイ・プードル | 3.2 | 体重よりも体高重視(トイの場合は体高25cm前後) |
フレンチ・ブルドッグ | 8~14 | ― |
マルチーズ | 3.2以下 | 理想体重は2.5kg |
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク | オス10~12 メス9~11 | ― |
ジャーマン・シェパード | オス30~40 メス22~32 | ― |
ジャック・ラッセル・テリア | 体高5cmにつき1kgが理想 | 体高が25cmなら5kgほどが目安 |
ヨークシャー・テリア | 3.1まで | ― |
ざっくりと主な犬種だけを挙げてみましたが、こちらはJKC(ジャパンケネルクラブ)の定めている理想体重を基準にしています。これらの体重を基準にして、愛犬の健康管理に活かすのがおすすめです。
ただし、ご覧になってお気付きかと思いますが、ダックスフントのように、体重よりも胸囲や体高が重視される犬種もあります。この場合、「どう見ても丸すぎる(太り過ぎている)」、「どう見ても痩せすぎている」という極端な状態でなければ、体重の多い少ないはあまり問われないことになります。
JKCの場合、ドッグショーに出る犬の基準ということになりますが、その犬種のスタンダードモデルで理想とされる体重や体高を理解しておけば、愛犬の適正な体重も自ずと知ることができるわけです。
固体別による適正体重を知っておくこと
ここで挙げた標準体重は、あくまでもスタンダードモデルとして理想とされる体重となります。遺伝によって骨太な固体であれば、それよりも体重は多めになるでしょうし、逆に痩せ型であれば体重も少なくなります。
骨太で体重が多めの個体であれば、例えその犬種の理想体重を上回っていてもそれが当たり前ですから、無理に標準体重に合わせようとダイエットなどをしても栄養失調に陥ってしまう可能性もあります。
逆に、元々痩せ方なのに無理やり体重を増やそうとすれば、栄養過多で体調を崩しかねませんし、下痢や嘔吐の原因にもなってしまいます。
最も理想なのは、愛犬が健康な状態のときの体重を把握しておくということです。その体重よりも少なければ病気が原因ということもあり得ますから、獣医の診察を仰ぐこともできますので、病気の早期発見にも繋がります。
また、病気が原因でなかったとしても、夏バテや熱中症、加齢によるものが原因だということが分かるため、早い段階で対策を立てることもできます。健康なときよりも体重が増加している場合でも、フードの与えすぎやおやつの与えすぎなどということに気付けるきかっけにもなります。
また、原因が思いあたらなければ何らかの疾患が原因ということも考えられますので、この場合でも早い段階で獣医の診断を仰ぐことができます。
肥満が原因で体に支障が出てくることもある
肥満は、さまざまな病気の原因になることがあります。人間も健康診断などでメタボリックシンドロームに関する部分などは、注意を受けたり食生活などを変えるよう求められたりする部分です。犬も同じだと思ってください。人間同様、犬も肥満が原因で体に支障を及ぼすこともあるのです。
整形外科的部分
肥満になると、関節や骨に負担がかかってしまいます。犬は、4本足での生活に加え、ジャンプなどをしますので、大きな負担がかかってきます。膝関節の炎症や十字靭帯の断裂、股関節の脱臼など痛みを伴うものにかかってしまうという可能性が考えられます。歩くことが苦痛になりますし、治るのに時間もかかりますから注意しなければなりません。
また、背骨にも負担がかかります。首や背中も心配ですが、腰(椎間板ヘルニアなど)をやってしまうこともあります。ですから、肥満は怖いのです。
内科的部分
体内に脂肪が多く蓄積されると、内臓に負担がかかってしまいます。「臓」と名が付くところに大きな負担が出やすいです(人間と同じですよね…)。
- 心臓:血流を増やそうとして心臓が肥大したり、心臓の弁が不具合を起こしてしまったり(僧坊弁閉鎖不全など)ということが出てきます。
- 肝臓:肝細胞が多く壊れて脂肪を肝臓に溜めてしまう脂肪肝や悪化して肝硬変などになることもあります。
- 腎臓:自覚症状や見てわかる症状がほとんどないため、発見が遅れてしまうケースが多いのが糖尿病です。
代表的な病気を挙げてみました。肥満自体は病気ではありませんが、肥満によって引き起こされる病気が怖いのです。
これって肥満?病気?
病気にかかってしまうことで太ってしまうということもあります。ホルモンの異常で起こる病気や糖尿病などがあります。クッシング病や甲状腺機能低下症などにかかっている場合、体重が急激に増えることが症状です。
「急に太ったな」と思ったら動物病院への受診をおすすめします。その反対に「急に痩せた」という場合もあります。この時も受診が必要です。
判断するポイントは「急に」です。食事の量が増えた(減った)ことがないのに、体型が急に変わるというのは、何らかの原因があるはずです。それが病気である場合は手遅れになる前に獣医に診断してもらう必要があります。
愛犬が肥満になってしまったら…どんなダイエット方法がある?
万が一、愛犬が肥満になってしまった場合、当然ながらダイエットをすることが健康維持のためには必要です。では、実際にどのようなダイエットをすればよいのでしょうか?
原則的に、犬のダイエットも人間のそれと大差ありません。運動や食事の管理といったものがダイエットの基本となります。
肥満の原因がどこにあるのかをまず突き止め、そこから改善していくのが最善の対策です。フードやおやつの与え過ぎによるものなら、与え過ぎないようにするだけでもダイエットになりますし、運動不足であれば適切な運動を取り込んであげるようにしましょう。
もっとも大きなミスが、成犬になっているのに気付かずに、パピー用フードを与えているケースです。パピー用フードは高カロリーのため、成犬が食べれば必ず肥満へと繋がりますから、その点は十分に気を付けたいところですね。
また、小型犬などをペットショップで購入すると、たまにスタッフから「室内犬は散歩も必要ありませんよ」というような説明を受けることがあります。しかし、これは大きな間違いです。
例え室内犬であっても、適度な運動は必要です。そしてその『適度な運動』とは何か?といえば、やはり散歩になるわけですね。
もちろん散歩でなくても、室内で運動する時間を作ってあげられれば問題ありませんが、ストレス発散という意味でも、たまには外へ連れ出してあげることも必要です。また、ダイエット専用フードに切り替えたり、手作りでダイエットフードを作ってあげることも有効な方法です。
いずれにせよ、ダイエットするためにはまず飼い主が本腰を入れてあげなければなりません。カロリー計算等、どうしても難しいというのであれば、獣医師に相談したり、ペットの栄養管理士などに相談するのもおすすめです。
犬は痩せにくいという事実はホント?
ダイエットといえば、「食事制限」か「運動」という考えになりますよね。しかし、人間には当てはまっても犬の場合は、運動は当てはまりにくいです。
運動で痩せるためには、基礎代謝を増やすことが必要です。しかし、犬は基礎代謝が元々高いので、毎日散歩を日課としている子の場合は、いつもの散歩に少し距離を増やしたくらいでは痩せません。「少し消費カロリーが増えたかな」程度だということです。
運動でカロリー消費を考えるのであれば、ドッグランなどで長時間走り回ることや飛び跳ねるなどの運動も取り入れる必要があります。
著者宅の秋田犬が肥満気味だと言われたことがあり、「運動ですか?」と聞いたところ、「食事制限がいいでしょう。それと、飼い主さんがお休みの時にドッグランなどでいっぱい走らせてください。普通の散歩では足りません。」と言われました。獣医の指示に従ってやってみたら、うちの子は半年続けて標準まで戻すことができました。
毎日朝夕2回の散歩をしている場合は、距離を伸ばすよりも、飼い主さんの休みの日に思い切り走らせることのできる場所に連れて行くことをおすすめします。
完全室内飼いの子は、散歩を日課にするか、運動ができるスペースを設けたり、連れていたりしましょう。
犬の肥満とダイエットまとめ
犬を飼育していると、体の見た目の変化に気付きにくいですから、体重を把握しておくことは何よりも必要なポイントと言えます。愛犬の健康をリアルタイムで把握できるのは、コミュニケーションとスキンシップと、体重です。
毎日毎日カロリー計算をしつつ食事管理も運動管理も万全だというならともかく、それほど愛犬に時間や手間を費やせる人もそうはいないはずです。せめて愛犬が健康なときにその体重を知っておくことくらいはしておきたいものです。
犬は自分の体重から健康かどうかを知ることができませんので、飼い主が愛犬の健康管理を日課にできるくらいがちょうどいいのかもしれませんね。
成長期の子犬や、栄養が不足しがちな高齢犬ならともかく、通常の成犬であればカロリー計算を踏まえて食事を与えてあげるのが理想です。また、ほんのちょっとだけのつもりで与えているおやつに関しても、カロリーを意識する必要があります。
そして、人間の食べるものは絶対にあげないこと!これも順守したいですよね。人間の口にするものは基本的に味が濃いため、肥満だけでなく健康そのものに悪影響を与えますし、飼い主と犬との上下関係にも差し支える恐れがあります。
太ってコロコロとした犬はとても可愛いことは確かです。それは否定しません。しかし、それによって犬の寿命を縮めてしまうようなことがあってはなりません。可愛いからという理由で肥満を放置しているという飼い主さんもいるかもしれませんが、できることなら早急にダイエットを考えることをおすすめします。