ペットの寿命も延びている現在ですが、それに伴い、愛犬の介護という課題も浮き彫りになりつつあります。ペットを飼育する際、最初から介護を視野に飼育をスタートするケースはまれです。
愛犬が高齢になって動けなくなった際に、初めて介護に直面する飼い主さんが多数なはずです。それが悪いというわけではありませんが、結局手に負えなくなり飼育放棄してしまうケースも実際にあるのです。長年信頼を寄せてくれたペットを、簡単に捨てる行為はやはり好ましいこととはいえません。
コロコロして可愛い愛犬も、いずれは歳を重ねて寝たきりになってしまうことは予測できることでもありますので、「いつかはうちの子も…」という気持ちを持ちつつ、将来的な介護へ備えることも必要です。
人間よりも遥かに寿命の短い犬ですから、気付けばあっという間に高齢の域に達してしまいます。そうなる前に、介護に対するある程度の予備的知識を知っておくことも必要でしょう。
ここでは、犬の介護について知っておきたい予備知識(フードや飼育環境など)と介護グッズをご紹介していきます。
犬は何歳から老犬なの?
犬は何歳になれば老犬(高齢犬)の域に達するのか?はっきりと認識していないという方も多いかもしれませんね。ドッグフードなどを見ると、概ね7歳以上と記載されているものが多いようですが、何歳を老犬の基準にするのかは犬種によっても異なります。
大型犬であれば、7歳ほどが老犬の域に達する年齢と言われていますので超大型犬であればもう少し早く高齢犬の域に達してしまいます。逆に、小型犬であれば10歳前後が高齢犬突入の目安となります。
老犬の飼育放棄も多い現状
非常に悲しい話ではありますが、老犬の面倒を見るのが面倒になり、飼育放棄してしまう飼い主もいます。ここまでずっと信じてきた飼い主に裏切られる犬の気持ちを考えると、これほど痛ましいことはありません。
飼育放棄する理由もあるのでしょうが、どのような理由であれ放棄は放棄です。そこに言い訳の余地はありませんよね?これから犬の飼育を考えている方は、どうか愛犬が老犬になった際のことも視野に入れて飼育を検討していただきたいと思います。
老犬になればなるほど飼い主の気遣いが重要
老犬になれば、視力も落ちますし聴力も落ちていきます。これまでと同じように生活していても、今まで避けて歩いていた物にぶつかってしまったり、何でもないような所で躓いてしまったりすることもあります。
また、近くに人が居ることに気付かないことも多いため、いきなり触られて驚いてしまうこともあります。老犬になれば、これまで何でもなかったことができなくなるというストレスや、いきなり触られたりすることの恐怖も抱えつつ生活をすることになります。
子犬の頃からずっと一緒に生活をしてきた愛犬が老犬になった場合、食事管理というのは最大級のキーワードとなります。ドッグフードに気を遣いつつ、そうした飼育環境にも気を配ってあげることも大切です。徐々に運動量も落ちてしまえば歩くこともままならなくなりますので、これまでと同じような距離を散歩するだけで相当な負担になってしまいます。
加えて、いくらフードに気を付けていても、筋肉量の低下を抑えるのは難しいですし、毛量もどんどん減っていきますから、寝る際の敷物やベッドなども、厚めのものを用意してあげるのが理想です。これまで長年生活を共にしてきた愛犬ですから、もうしつけということはあまり考えなくていいでしょう。
老犬の域に達したら少しは甘えさせてあげることも許容してあげましょう。いかに、ストレスを軽減させてあげられるかは、飼い主の裁量にかかっているのです。
また、健康診断なども継続すべきですし、万が一の異変にも即対応できるように、獣医とも連携を取っておくのが望ましいでしょう。
参考:わんちゃんホンポ
徐々に低下する運動機能!愛犬のリフレッシュを第一に考えて
散歩に出るのも苦労してしまうほど老いてしまっているのであれば、たまに外の空気を吸わせてあげるだけでも良い刺激となり、犬のとってのリフレッシュ効果もあります。
犬にとって、散歩はもっとも身近なリフレッシュ法となります。外の空気に触れて気持ちよく歩くことは、犬にとって最高の気分なのです。それは、子犬であっても高齢犬であっても同じです。
特に、高齢犬であれば筋力や体力を維持するためにも、健康なうちに積極的に散歩へ連れ出しましょう。ヨボヨボであっても、少しでも歩ける状態なら補助具などを用いてでも歩けるだけ歩かせてあげることが大切です。
歩けなくなってしまうと、一気に衰弱が進んでしまいますので、歩けるときに歩いておくことがとても重要なのです。もちろん、歩かせ過ぎたりするのは逆効果ですので、愛犬の様子を見つつ体力に合わせて散歩をしましょう。
歩行補助ハーネス
補助機能付きベスト
先にも述べましたが、歩行できなくなってしまった犬もストレス解消や気分転換のために散歩は必要です。自ら歩けない状態であれば、ペットカート(犬用カート)を利用しましょう。
トリミングは老犬にも必要!
老犬で介護が必要になっても、できるだけトリミングができる状態であるならば、それを継続したいものです。ブラッシングはもちろん、シャンプーなども健康維持のためにも必要です。
老犬は長時間立たせたりするのはNGですので、無理のない範囲で継続することを心掛けましょう。日常的に清潔を保つことで、不衛生に伴う皮膚疾患などを予防することにも繋がります。ただし、高齢犬は皮膚も弱くなりますので、シャンプーのしすぎやブラッシングのしすぎには十分に注意を払いましょう。
また、ペットサロンに連れて行くとストレスが溜まってしまうこともあるので、犬の毛のカットは飼い主さんが犬用バリカンを使って行ってあげるのもおすすめです。
こちらの記事も参考にしてみて下さい。
寝たきりになったら床ずれ防止を意識して
完全に足腰が立たなくなってしまうと、いわゆる寝たきりという状態になります。高齢になってからの怪我や、椎間板ヘルニアなどによって寝たきりになるケースが多いです。
寝たきりになって最初に気を付けるべきことは床ずれです。皮膚の抵抗力なども弱くなっている高齢犬は、比較的短い期間で床ずれを起こすことも珍しくありません。
床ずれの原因は、長時間に渡って体の同じ面がマットなどに触れていることが原因で引き起こされます。圧迫によって血行が滞り、組織が壊死してしまうのです。時間を見つつ体の向きを変えてあげるなどすれば、床ずれは防止できます。
床ずれ予防ベッド
老犬になったらフードを切り替える!
老犬になったら食事を見直す必要があります。ドッグフードはシニア用に切り替えるべきなのか?また、老犬にはどのようなタイプのドッグフードが最適なのか?を紹介していきます。
まず、高齢犬になるに従ってどんどん代謝も低下していきますし、そもそも運動量も落ちていきますので、成犬の頃のようなカロリーも必要としなくなります。それなのに同じフードを与え続けてしまえば、どんどん肥満になってしまいますし、肥満になれば体にかかる負担も増してしまい、それが寿命を縮めてしまう原因になってしまうのです。
食欲減退などの症状が現れた場合は、健康状態を第一に考えて適切な食事に切り替える必要もあります。嗜好性の高いものを混ぜたり、消化機能も弱ってくればふやかしなどのフードを与えることが必要になります。
シニア用の低カロリーで低脂肪なフードへと切り替えます。低カロリー&低脂肪を意識しつつ高タンパクな食事を与えましょう。高齢犬といえども、足腰を弱らせないために筋肉の維持は欠かせません。
実は、高齢犬は成犬よりも多くのタンパク質を摂取しなければいけないというのはあまり知られていません。鶏肉や魚など、動物性タンパク質の中でも質の良いものを与えるのが理想です。
ドッグフードも様々種類がありますが、原料のひとつひとつにこだわったタイプを与えるのはとても重要なポイントとなるのです。介護用のドッグフードやサプリメント等もありますので、そちらに切り替えてしまうのもひとつの方法です。切り替えるタイミングなどは、獣医などともよく相談しましょう。
ドライフードを食べられない老犬は?
日常的に歯のケアをしていても、体質的に歯が脆くなり噛むことができなくなる犬もいますし、消化の力もどんどん弱っていってしまいます。そうした場合は、ドライフードではなくお湯でふやかせて食べさせたり、ウェットタイプのフードへ切り替えるなどの対応も必要です。
また、思い切って手作りフードにしてしまい、飼い主自らが栄養管理に気を配るようにするのもいいでしょう。老犬がドッグフードを食べないということもあるかもしれません。食欲不振になっているのか、もしくは病気などが関係しているのか…何が原因なのかをしっかりと把握して対策を講じましょう。
シニア犬用のミルクも用意しておきましょう。
また、寝たきりになると、自分で食事もままならなくなってしまいますので、飼い主がサポートしてあげなければなりません。食事を与える時は持ち手付食器が役に立ちます。
排泄のサポートは介護の要
排泄のサポートも介護の要となります。犬はトイレへと向かいたいのに、筋力の低下によってトイレへとたどり着く前に排泄してしまうこともあります。犬用オムツなどを使用することも必要ですが、犬が自力で歩けるうちは体力維持のためにもなるべくトイレは自分で行かせるようにしましょう。
トイレまでたどり着けないのであれば、近い場所にトイレを設置してあげるなどの配慮もほしいところです。介護グッズとしては、おむつや運搬補助マットが必要となります。
介護用おむつパンツ
老犬用紙オムツ
運搬補助マット
介護のためにもバリアフリーの環境を設けましょう
人間の介護にも必要なことですが、愛犬の介護でも、やはりバリアフリーの環境がもっとも適しています。体力の低下とともに、段差などでつまずくことも想定できますし、その他の視覚や聴覚、嗅覚などの機能も低下していきます。
若い頃は何でもなかった段差も、高齢犬にとっては難所ともなりかねません。できるかぎり段差をなくしてあげることで、無駄な怪我の防止になります。
認知症になったら介護は不可欠!
人間と同様、犬にも認知症があります。犬の寿命が長くなっている現在では、犬の認知症も多数報告されており、決して珍しい話ではなくなってきています。
夜泣きが増えたり、夜中に徘徊したり、同じところを歩き回っていたり、いきなり怒ったり、呼びかけても何の反応もしなかったり、言うことをきかなくなったり――といった症状がみられた場合、認知症を患っている可能性があります。
老犬介護施設(老犬ホーム)のこと
老犬ホームとは、老犬介護施設のことで、認知症や寝たきりになってしまった犬を家族の代わりに面倒をみてくれるところです。夜鳴きがあったり、体が不自由になってしまったりという犬を預かってくれる施設は、各都道府県に数十ヶ所あるようです。
施設の特色は多彩
施設の特色は実に多彩です。例を挙げてみましょう。
- 広い敷地内にドッグランがある
- 施設内に温泉がある
- 個室が広めで、環境が良い
- 人里離れたところで自然に囲まれている
- 動物病院が併設されている
などです。飼い主さんは施設にお見舞いに行くことができます。まったく会えなくなるわけではありませんので安心してください。
選ぶ際の注意点
さまざまな環境でそれぞれの特色がある老犬ホームから選ぶ際は、特色だけでなく施設内を見学して自分の目で見ることが基本です。見学と面談の際には、次のことも確認しましょう。
- 施設の衛生面
- スタッフの世話の仕方
- 獣医が常勤しているか(していない場合は到着までどのくらいか)
- 面会の有無
- 施設までの距離(面会に行きやすいか)
- 近辺の施設で反対運動などが起こっていないか(愛犬が巻き込まれないため)
- 料金が見合っているか
- 吠える症状が出ている場合、受け入れてもらえるか
前出の友人は、愛犬が吠えることが昼夜になったため、老犬ホームを見学してお願いしました。運良く動物病院が運営している介護施設に入ることができたと言っていました。
ただ、この施設に出会えるまでかなりかかったと言っていました。なぜなら、吠える子を受け入れしていない施設が多かったからだそうです。この点も確認しなければならないでしょう。
それ以外には、衛生的に問題があるような施設や、スタッフの世話の状態が悪いところでは、愛犬がどんな扱いを受けるかわかりません。だから、その辺りはしっかりと見ておきたいところです。
犬の介護の心得
犬の介護についてまとめられている本も発売されています。これから訪れる愛犬の介護に備えて心構えをしておきましょう。評判の良いおすすめ本を2つピックアップしてみました。
さいごに
最近では、犬の介護グッズなども充実度を増してきています。また、地域によっては老犬ホームなるものまで登場しています。まだ犬の飼育を考えている段階や、飼い始めの段階では、そこまで気が回らないかもしれませんが、いつ、どのような状況で介護が必要になるか分かりません。
その時になってから慌てるのではなく、あらかじめ必要な情報を収集しておくだけでも十分な備えとなるはずです。「へえ~、こんなものがあるんだ」といった程度で構いません。初めての介護であたふたと慌てふためいてしまう前に、介護の予備知識に触れること、そして愛犬の健康状態把握に努めましょう。