これから犬を飼おうと考えているなら、愛犬のお手入れについても知っておく必要があります。愛犬のお手入れといえばトリミング(グルーミング)です。トリミングの意義は、愛犬の被毛の美しさを保つということだけでなく、皮膚の健康管理にも欠かせないものです。
基本的に、手間も時間もかかってしまうトリミングは、動物病院やペットサロンなどで定期的にシャンプー&カット、ブラッシング、爪切り、耳掃除してもらうのが理想です。すべて飼い主自ら行うという人もいますが、飼い始めでそういったことには慣れていない場合は、ケガ等の危険性もあるのでプロにお願いした方が確実です。
しかし、たまには飼い主自らがトリミングをすることも大切です。愛犬の被毛や皮膚の状態も把握することができますし、愛犬との意思疎通、コミュニケーション強化にも繋がるものです。
初めて犬を飼う人にとって、トリミングというのはややハードルが高いかもしれませんが、唯一手軽に行えるトリミングがあります。それが、ブラッシングです。ここでは、初心者でも簡単に行うことができるブラッシングについて、やり方のコツやおすすめのブラシについてお話していきますね。
犬の被毛の保護、皮膚の健康管理に欠かせないブラッシング
初心者にとってハードルの高いトリミングの中で、唯一手軽に行えるのがブラッシングです。ブラッシング専用のブラシは、ペットショップはもちろん、ホームセンター、コンビニ、100均などにも売られているほどポピュラーなアイテムです。
お散歩中に付着したゴミや汚れを落とす役割もありますが、何より大きなメリットと言えるのが被毛や皮膚の健康管理につながるということです。定期的なトリミングどころか、ブラッシングすらしていない犬は被毛の状態も最悪ですし、頻繁にかゆがったりする傾向も多く見られます。犬がかゆがるということは、つまり皮膚が正常な状態ではないということになります。
ストレスや病気が原因でかゆがることもありますが、ストレスなどのような内的要因であっても、皮膚をかきむしることは良いことではありません。
また、ストレスや病気以外の理由でかゆがっているということは、間違いなく外的要因が関係していることになります。被毛や皮膚の衛生状態が悪いために皮膚炎などを引き起こしているかもしれませんし、換毛期による抜け毛によってかゆがっているかもしれません。
さらに、お散歩中にダニやノミなどが付着していることが原因でかゆみの元となっていることも考えられます。いずれにしても、ブラッシングすらしていないと見た目も良くない上に、皮膚病などの犬の健康にも害を与える可能性があるのです。
犬のブラッシングのやり方とコツ
飼い主さんも愛犬も双方が楽しく行えることが大切です。ブラッシングは、グルーミングの1つであり、コミュニケーション方法の1つでもあります。いい関係を作っていくために必要なことです。
換毛期などであれば特に念入りにブラッシングしてあげる必要があります。ブラッシングのやり方はショップなどで聞くのもいいでしょうし、最近では動画サイトなどにもブラッシングの仕方がアップされているので、そうしたものを参考にするのもおすすめです。
注意点としては、『ブラッシングしすぎないこと』です。ブラッシングという行為自体は大事なものですが、過度にブラッシングし過ぎると逆に被毛や皮膚を傷める原因となります。
ブラッシングのやり方とコツ
- 優しく撫でるようにする
- 毛の向きに沿って撫でるようにとかす
- 毛の薄い部分は、強くやらない
- 引っかかりがある場合は無理にやらない(ハサミで切るようにします)
毛の長さによってもコツがあります。
- 短毛種:ブラシで優しく行うか、コームですかす程度でも抜け毛は取れます。
- 長毛種:抜け毛を取り除くことが先。その後で毛並みを整える(ブラシとコーム使用)。
- ワイヤー種:抜け毛取る部分は長毛種と同じですが、コームはなるべく使わないようにするといいです(毛を引っ張ってしまうことになるので)。
ブラッシングを行うイメージは、猿が子どものノミ取りをするような感じです。丁寧に優しく、愛情を持って行いましょう。
ブラッシングをしながらチェックすること
愛犬のブラッシングをする際に、必ずチェックしたいのは皮膚です。ブラシでとかしている時に毛をめくって皮膚の状態を見てあげましょう。皮膚炎や肌荒れなど何らかの皮膚疾患が起きていることに早く気づいてあげられると治りも早いですし、大病にならずに済みます。
また、ダニやノミといった寄生虫がいた場合、人間に害を及ぼすこともありますので、飼い主さんが病気にかからないようにするためでもあります。
換毛期は念入りにやってあげよう!
換毛期は、抜け毛の量がハンパではありません。室内飼いの場合は、じゅうたんなどの敷物だけでなく、衣類にも付きます(クローゼットの中まで入ってくることもあります)。ブラッシングしても、愛犬が体を揺らせば抜け落ちるということもあります。
多頭飼いをしているような場合はさらに大変になります。愛犬も毛を早く落としたいのでしょう。毎日掻いたりこすりつけたりして取ろうとします。飼い主さんは、できるだけブラッシングをしてあげるようにしましょう。
時期は春と秋です。ただし、住んでいる環境での日照時間と室温などが関係して多少ズレてしまうことがあります。著者宅の秋田犬もかなり抜けるため、この時期は朝晩のブラッシングをしなくてはならないほどです。この時期は本当に念入りに行いましょう。
絡まった毛は無理に取らないこと
時々、「何をしたのか理由はわからないが毛玉になっている!」ということがあります。これは取るのが難しいです。ブラシで無理に取ろうとすれば、その部分が全部抜け取れてしまうことも少なくありません。そうすれば、愛犬に痛い思いをさせてしまいます。
著者も初心者飼い主の頃、無理に引っ張って、円形脱毛のような状態にしてしまったことがあります。ブラシに引っ掛かったときにやめればよかったのですが、テレビを見ながらブラッシングをしていたため、力を込めて引いてしまいました。
手でゆっくりほぐすようにすれば時間はかかりますが取ることができます。しかし、どうしてもダメな場合は、トリマーさんにお願いをするか、その部分が小さい場合はハサミで切るようにしましょう。ハサミを使う時は十分に注意してください。
愛犬のブラッシングにおすすめのブラシはどのタイプ?
愛犬のブラッシングには、ブラシが欠かせません。ただ、ブラシにはさまざまな物が販売されていますので、愛犬に合う物を用意することが大切です。
犬専用ブラシは、先にも触れましたがどこにでも売られていますし、価格もピンからキリまで様々です。大きさや形も色々ありますが、できれば複数のブラシを使い分けて、部位別に使用するのがいいでしょう。
スリッカーブラシ
トリミングサロンなどでは、「ブラッシングといえばこれ!」と言われるほどよく知られた存在です。犬専用ブラシのことを「スリッカー」とも呼びますが、それがこのタイプです。
ペット先進国イギリスのメーカーということもあり、その品質にも定評があります。壊れにくく、長く使えば使うほど手に馴染んでくるのも特徴です。ソフトタイプとハードタイプがありますが、初心者なら皮膚を傷つけないためにもソフトタイプをおすすめします。
細いピンのようなものが全面に密集して付いているブラシです。腰の折れ曲がり感がひらがなの「く」の時に似ています。金属製です。
ペットショップやホームセンターなどで売られている、昔からあるタイプです。細いピン状の部分で毛をとかすのですが、あまりにも力を入れてとかしてしまうと、皮膚を傷つけてしまいます。
中型犬~大型犬、長毛種の犬種に使うといいでしょう。子犬期は遊ぶことが先でブラッシングがしにくい場合があります。そのため、「成犬向きかな」と感じることもありますが、個体の性格などで使うかどうかを、飼い主さんが決めましょう。
スリッカーブラシ プロフェッショナル
コーム
こちらもスリッカーブラシと同様に金属製です。抜け毛を取った後に毛並みを整えるのに使います。顔周りなどブラシが使えない部位に使うことができます。
スリッカーブラシで取れた抜け毛(ブラシに絡まっている分)を、コームを使って取っている飼い主さんもいます(うちでもそういう使い方をしています)。
ワイヤー種以外は、どの犬種にも使えます(ワイヤー種が使うと、毛が絡まってしまうので不可)。犬種によっては、抜け毛を取りますし、他の犬種によっては最後の仕上げ用として使うことができるので、一家に1つは必要だと思います。
獣毛ブラシ
名前だけ見ると怖い感じがするかもしれません。獣毛というだけあって、イノシシや豚の毛を使って作られています。ぱっと見は、靴用のブラシか何かなと感じるかもしれません。しかし、優れ物で抜け毛を取るだけでなくマッサージを行うこともできます。
犬種で分けるというより、長毛種(イノシシ毛)か短毛種(豚毛)かによって使い分けます。サイズがありS~Lまであります。毛の柔らかさを重視して選ぶことができますので、愛犬に合う物を揃えてあげられます。
ではここで、筆者も使っているおすすめの犬専用ブラシをご紹介しますね。
ラバー製のブラシ
シリコンラバーなどで作られたブラシです。多くは楕円形(エクレアくらいの大きさかな)をしていて、柔らかいのが特徴です。先端は丸みを帯びているので、皮膚に余計な刺激を与えません。
柔らかさと優しい刺激が特徴なので、抜け毛を取りながらマッサージをすることもできます(撫でるように使います)。子犬や小型犬、スムースコートの犬種に使うといいでしょう。
換毛期などの抜け毛対策に効果的なブラシ
換毛期などの抜け毛が激しい時期にもおすすめできるのがシェッドバスターなどの抜け毛対策用ブラシです。抜け毛をごっそり捕まえてくれるので、被毛の飛び散りも少なくて済みます。
ただし、あまりにも抜けるため、調子に乗りすぎて長時間使用してしまうのはNG。被毛の抜けすぎや、皮膚を傷つけてしまう恐れもあるので、ある程度使用したら通常のブラシに切り替えましょう。
このタイプは、シングルコートの犬種にはあまりおすすめではありません。使用するなら、季節の変わり目に抜け毛が著しいダブルコートの犬種におすすめです。
なお、ブラッシングに必要な道具はずっと使えるので最初にまとめて揃えておくことをおすすめします。
手袋タイプのマッサージブラシ
ブラッシングをするためにブラシやらコームなどさまざまなものを用意しておく必要があるため、面倒に思う方もいらっしゃるかもしれません。また、子犬(特に小型犬)でブラシを使うのは「ケガをさせてしまうようで怖い」と思う方もいるでしょう。
こんな場合は、ブラッシング用の手袋が売られていますので、活用することをおすすめします。手の平側には、安全性の高い先端の丸くなったシリコンラバー製のトゲ状のものが付いています。早く言うと、手袋とラバーブラシが合体したようなものです。
ですから、手にはめて愛犬を撫でるようにするだけでブラッシングすることが可能です。ブラシでは行えないような部位も撫でるだけで抜け毛を取ることができます。マッサージにもなるため、愛犬を喜ばせることができるという点もおすすめする理由です。
何より、衛生的に行えるので飼い主さんの手をわずらわせることがありません。
小型犬の子犬でも使うことができます。ブラッシンググローブを使えば、ケガの心配をする必要がなくなります。ブラッシンググローブは、このようにメリットとなる部分が多いのが特徴と言える画期的なアイテムです。
ブラッシングの頻度は?
定期的にトリミングを行い、日常的にブラッシングをすることは、被毛や皮膚のトラブルを防止する意味でも重要なものということになりますね。
体がかゆいということは、人間であってもとても不快ですよね?それと同じで、犬にとっても体のかゆみはストレスになってしまい、かゆみの原因が外的要因であっても、ストレスという内的要因が絡み合ってより症状が悪化してしまうこともあります。
ブラッシングをすることによって、抜け毛が部屋中に飛ぶのを防ぐことができます。定期的に行えば、衣服などに毛がつきまくってしまうといったことがもなくなります。
飼い主と愛犬のコミュニケーションとも言えるブラッシングは、どのくらいの頻度で行えばよいのかと初心者飼い主さんは考えるかと思います。ブラッシングはどのくらいの頻度で行うのが理想なのでしょうか。
理想を言えば、毎日が基本です。ブラッシングは犬にとって気持ちのいいものです。全身を撫でられているような感じになり、幸せを感じることでしょう。
- 飼い主の行うブラッシングに関しては、できれば毎日行うのがおすすめです。
特に、長毛犬種の場合なら尚更、毎日のブラッシングは必須です。長毛犬種の場合、ブラッシングを怠っていると必ず毛玉になってしまいます。被毛もぼさぼさで毛玉ができてしまっている犬を頻繁に見かけますが、やはり他の愛犬家からするとあまり良い印象を与えません。
しかし、飼い主さんが仕事などで忙しく「毎日は難しい」という場合は、週2~3回を目安に行うことをおすすめします。でも、時間がある場合は、少しの時間でいいのでブラッシングをしてあげてください。愛犬も喜びます。
- トリミングの場合は、最低2ヶ月に1回、できれば1ヶ月に1回程度のサイクルで行うのが理想です。
プロのトリマーさんにお願いすることになるわけですから、お金の負担も生じてしまうことになりますが、犬の衛生管理には欠かせないものなので、できれば1ヶ月~2ヶ月というサイクルは維持したいものです。
『衛生管理や健康管理がしっかりできていない飼い主』というレッテルを貼られてしまうことになりますから、犬を飼う以上はそうしたことにも気を配る必要があります。
まとめ
初心者でも手軽に行えるブラッシングですが、なるべく丁寧に小まめに行うのが基本です。ブラッシングをしていれば、毛並みも良くなり、被毛の艶も良くなっていきます。
愛犬家であれば、他の犬であってもしっかり手入れされているか、可愛がってもらえてるかということがすぐに分かります。飼い主として恥ずかしくないように、日々のブラッシングは怠らないようにしたいものですね。
また、犬の抜け毛をしっかりと落としつつ皮膚の健康をサポートするシャンプーや、人の服に付着しにくくする洗剤なども上手く活用していきましょう。