愛犬に顔をペロっと舐められたとき、その口臭の強さに思わず「うっ!」と顔をそむけてしまった経験はありませんか?「犬は動物。そして、動物の口は臭いもの」という風に考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。
口臭のする犬もいれば、まったく口臭が気にならない犬もいるのです。同じ犬なのになぜ?そう思われるかもしれませんが、犬の口臭も人間と同じ。口腔内や内臓の異変の原因となっているケースがほとんどなのです。
また、「犬の歯磨きは必要なの?」これは、初めて犬を飼う人の多くが口にすることです。実際問題、犬を飼育する際に歯磨きのことを念頭に置いている人というのは意外と少ないようです。単に番犬として犬を飼育してきた昔とは違い、『家族としてのペット』という意識の強くなった現在では、犬のオーラルケアに関してもその必要性が声高に叫ばれるようになってきました。
この記事では、犬の口臭の原因、嫌がる犬に歯磨きをする方法と虫歯予防についてお話していきます。
犬が舐めてきた時に口臭をチェック!
愛犬が甘えてくるときなど、飼い主の顔をペロペロと舐めてくることがありますよね。その際に口臭をチェックしておくことで愛犬の健康管理に活かすことができます。その代表例が虫歯や歯周病です。普段はあまり意識していなくても、顔を舐められた際に意外と口臭が強くて驚いたという飼い主さんも多いようです。
知らず知らずのうちに歯石が溜まっているなら早めに取り除くことが必要ですし、虫歯や歯周病なども同様です。
放っておいて治癒することなどまずありませんから、そうした異変を早めに察知するという意味でも、「舐める」という行為は重要だということになりますよね。少なくとも、「うちの子は口臭がキツイから舐められたくない」という場合は、早めに何らかの対策を講じるようにしたいものです。
口の臭いが強いということは口腔内の環境も悪いということになりますので放置は厳禁ですし、舐めることを飼い主に拒否されることで犬も心理的なストレスを抱えかねません。
犬の口臭の原因は虫歯・歯周病とは限らない!?
愛犬は可愛い――それはすべての飼い主さんに共通する思いでしょう。しかし、顔を舐められるたびに飼い主が顔をそむけてしまっていては、犬も思うように愛情表現をすることができません。
口臭がするということは、その原因が必ずあるはずなのです。
- 口腔内の異常(虫歯・歯周病など)
- 内臓の異常(胃腸の調子が悪いなど)
- 食べ物が原因
犬の口臭の原因としては以上のようなことが挙げられますが、その中で最も多い原因が口腔内の異常です。つまり、虫歯や歯周病による口臭が大半を占めているのです。口腔内を不潔にしておけば、人間と同じように食べカスによって歯垢がたまりますし、雑菌が繁殖して口臭がきつくなります。
また、それによって虫歯になることもあれば、歯周病になることも当然あります。口腔ケアは飼い主の努めですが、日々の忙しさに駆られてなかなかそこまで気が回らず、手をかけてあげられないこともあるでしょう。
しかし、そうこうしているうちに口腔内の環境はどんどん悪化していきます。虫歯や歯周病が進行すれば口臭が発生するのは当たり前ですし、歯周病が原因で内臓にまで悪影響を及ぼすことだってあるのです。
犬の場合、虫歯になれば有効な治療法はありません。人間とは異なり、虫歯の進行した歯は抜歯するしかないのです。それでは犬が可哀想ですし、そこまで放置してしまった飼い主としても悔いが残るというものです。
歯周病にしても、成犬の多くが歯周病になっているとも言われているほどメジャーなのです。「うちの子は大丈夫!」と、安易に考えてはいけません。虫歯にならない犬、歯周病にならない犬など存在しません。
いるとしたら、それは飼い主がしっかりと口腔ケアを行っている犬だけです。
口臭の原因がどこにあるのか簡単にチェックする方法があります!
口臭の原因の多くが口腔内の異常によるものですが、時として内臓の異常が原因の場合もあります。口臭が口腔内の異常によるものか、それとも内臓の異常によるものかは、犬の歯のニオイを嗅げば容易に知ることができます。
もしニオイがするのであれば、それは口腔内から口臭が発生していることの証です。逆に、ニオイがしなければ、内臓が原因になっている可能性があるのです。内臓が原因であれば、胃腸の異常が主な原因です。
口臭がしているとなると、症状もかなり進行している可能性が高いので、早めに獣医の診断を仰ぐことをおすすめします。
普段食べているドッグフードが原因なことも!?
先に、犬の口臭の原因を3つ挙げましたが、そのうちのひとつが食べ物です。食べ物が口臭の原因とはどういうことかと言いますと、実は普段与えているドッグフードに含まれているたんぱく質や資質などが口臭の原因となっているケースがあるのです。
粗悪なドッグフードには、主原料に使われる肉のほかに、人間では決して口にすることのない肉の副産物や、添加物が豊富に含まれています。こうした物質が腸内環境の悪化を招き、口臭を引き起こすこともあります。
普段口にするドッグフードやおやつが粗悪なものであれば、高い確率で口臭の原因となり、ひいては体調悪化の要因を作ることに繋がります。粗悪なフードを与えることは、口臭以外にも様々なでデメリットを生んでしまいます。フードの質にこだわることはとても大切ですし、与えるフードもドライタイプがおすすめです。
ウェットフードなどは食べカスが歯に付着しやすく、虫歯や歯周病の原因になりやすいことでも知られています。逆に、ドライフードは硬めに作られているため、噛むことで歯に付着した汚物を取り除く役割もあります。
内臓を健康に保つために腸内環境を整えよう
内臓の病気は命にもかかわることもあるため、できるだけ予防に努めたいものです。口腔内の異常もそうですが、あらかじめ適切に対応をしておけば十分に予防することができます。内臓、特に腸を健康に保つ上で大事なのが乳酸菌です。犬も人間と同様に、腸内環境が健康維持に大きく関係しています。
乳酸菌など、いわゆる善玉菌を摂取することは腸内環境ケアのアプローチになります。腸内では免疫細胞も作られているため、腸を健康に保つことは体全体の健康を保つ上でも欠かせません。
乳酸菌はヨーグルトから簡単に摂取できますが、与えるのであれば犬用のものが理想です。やむを得ず人間用のものを与えるのであれば、砂糖入りではなく無糖タイプを与えましょう。
愛犬が健康的でいられるためにもデンタルケアは大切
犬も、歯がある以上は歯垢も溜まれば虫歯にもなります。デンタルケアを怠っていれば、やがては歯周病や歯肉炎、虫歯などに至ってしまうのです。
痛みに強いと追われる犬ではありますが、それでも虫歯が進行していくとその痛みでフードを食べなくなってしまうこともあります。できることなら、日常的にオーラルケア・デンタルケアをしておくことが必要です。
もちろん、日常的に歯を磨くようにするのが理想であることは言うまでもありません。歯ブラシで磨く方法のほか、歯磨きシートや液体ハミガキなどを使用する方法もあります。
また、日常的におもちゃで遊ばせることで、噛むことによる歯垢除去につながりますし、グリーニーズに代表されるような歯磨きの役割があるガムを与えるのもいいでしょう。ただし、キシリトール入りのものは犬にとって有害となりますので、たとえペットショップなどで販売されていても購入は避けましょう。
犬の歯磨きは”しつける”のではなく”慣れさせる”
犬の歯磨きセットは、ペットグッズを取り扱っているお店ならどこでも販売されているほどポピュラーなアイテムでもあります。歯ブラシにも様々な形状のものがありますから、お好みに応じたものを選ぶことができます。
歯磨きのしつけ自体もそれほど難しいわけではなく、小さなころから歯磨きに慣れさせておくと、それほど苦労せずに歯を磨かせてくれます。
しつけとはいっても犬が自ら歯磨きをするわけではありませんし、飼い主が歯磨きをすることになるわけですが、どうしても歯磨きを嫌がる犬もまた多いようですね。
歯磨きに慣れている犬や、そもそも歯磨きそのものを嫌がらない犬であればいいのですが、嫌がる犬に無理矢理歯磨きをするのは結構なストレスともなりかねません。歯磨きが嫌いな犬は、それこそ全力で嫌がるようになってしまうため、歯磨きを行う飼い主も疲れてしまいますし、歯磨きをしようという意欲も削がれてしまいます。
嫌がる犬に歯磨きをする方法
愛犬のためとはいえ歯磨きがどうしてもできない場合、飼い主としたら一体どうすればいいのでしょうか?嫌がる犬に歯磨きをする方法をいくつか紹介します。
参考:ワンペディア
歯ブラシではなくガーゼなどを使う
歯磨きを嫌がる犬の多くが、歯ブラシで口の中をゴシゴシされること自体を嫌悪します。その場合、歯ブラシではなく、ガーゼを使用して歯磨きをしてあげるとおとなしく磨かせてくれることもあります。
市販されているガーゼを使用してもいいですし、指サックのように指にはめ込んで使用できるタイプのものも販売されています。歯ブラシのような異物を口の中に入れられるよりは、飼い主の指の方が犬にとってもストレスが少なくて済みます。
磨き剤を変えてみる(キシリトール入りはNG!)
歯ブラシに付ける磨き剤を変えるのもいいかもしれません。犬用歯磨き剤は、液体状のものやジェルタイプのものなどがありますが、その味や食感を嫌って歯磨きさせてくれないこともあります。
歯磨き剤そのものを変えることで、歯磨き嫌いが変わることもあります。ただし、歯磨き剤選びで注意していただきたいのは、絶対にキシリトール入りの磨き剤は使用しないことです。
キシリトールは人間には無害ですが、犬には有毒となります。未だにキシリトール入りの歯磨き剤が売られているのには驚きますが、それは絶対に購入してはいけません。
歯磨き用ガム&おもちゃなどを使用する
どうしても歯磨きが嫌なら、グリーニーズなど歯磨き用のガムを与えたり、歯磨きの役割もこなすおもちゃを使用する方法もあります。おもちゃなどでしょっちゅう遊んでいる犬の歯はとてもキレイです。これは、噛む行為によって歯垢や歯石が自然に落とされているからで、そうした犬は歯磨きが必要ないとも言われるほどです。
歯磨きガムには小型犬用~大型犬用までのものが売られていますから、犬の大きさに合ったものを選びましょう。
歯磨き用ガムを与える場合は、なるべく長時間噛むようにし、できれば飼い主が手に持ってすぐには食べ終わらないように工夫することも必要です。おやつの大好きな犬であればろくに噛みもせずに丸のみしてしまう犬もいますから、それでは歯磨きにはなりませんし、消化不良などの危険もあるので注意しましょう。
おもちゃ好きな犬であれば、デンタルケア専用のおもちゃがおすすめです。
スプレータイプの口臭対策・デンタルケア
その他、口に直接スプレーして口内洗浄できるタイプのものや、水に混ぜるものなど、様々なものがあります。
犬の虫歯予防に必要なこと
特に歯磨きが嫌いな犬に対しては、虫歯にならないための予防法を知っておくこともポイントです。
ドライフードや硬めのおやつを与える
持病などで手作りフードを与えなければならないという特別な事情でもない限り、与えるフードはドライフード、おやつも硬めのものがおすすめです。
ドライフードや硬めのおやつは、それ自体が歯垢も溜まりにくいです。先にも挙げたガムやおもちゃと同じように、普段からそうしたものを与えるように心掛けておけば、自然と虫歯予防ができます。半生タイプのフードなどは食べカスも付着しやすいため、虫歯リスクも高まるのです。
水は食器で与える
虫歯や歯周病の原因は食べカスです。食べカスは、ドライフードのほかに水の与え方を工夫するだけでも除去することができます。
最近では給水器を取り付けて水を与えるケースが増えてきていますが、できれば犬用の水皿を用意するのがおすすめです。食器から直接水を飲む際、ジャブジャブと口をゆすぐこともできるため、食べカス除去やうがいにもなります。
逆に給水器では、ただノズルをペロペロと舐めることしかできませんし、口内を洗浄するほどの量を口の中に取り込むことができず、うがいの役割を期待することができないのです。
もちろん、給水器には給水器のメリットもありますが、なるべく食器タイプのものをおすすめします。
歯垢除去も虫歯治療も犬には大きな負担!
犬を飼うと、何かと動物病院へ行く機会も増えます。病気や怪我でお世話にならない場合でも、ワクチン接種や健康診断など、必ず動物病院のお世話になります。その際、獣医さんは犬の触診をしながら必ず口内もチェックします。
歯垢が溜まっていれば指摘されることになりますし、虫歯予防のために歯垢除去を勧めてきます。もちろん、虫歯になっていれば治療を勧めてきます。
しかし、歯垢除去も虫歯治療も全身麻酔で行うことになりますから、麻酔自体が犬の負担になってしまいます。稀なケースではありますが、全身麻酔によって命を落としてしまうこともあります。
また、虫歯治療に至っては、ほぼ抜歯がメインとなるので、大切な歯を失うのは犬にとっても可哀想なことです。そうならないために、日頃のデンタルケアにはできるだけ努めるべきですし、犬の健康維持という観点から見ても大切な要素ともなるわけですね。
獣医さんとしても、できれば余計な全身麻酔などしたくはないはずです。犬の命に関わるリスクがあるのですからそれは当然です。しかし、歯垢が溜まるとか、虫歯になるとか、そうした場合の対処として、今できる最大限の治療が全身麻酔による歯垢除去や抜歯という方法なのです。そうした無駄なリスクを冒さないためにも、デンタルケア・オーラルケアは必須ということですね。
定期的な歯石除去を!
自宅でできる犬用の歯石除去セットもおすすめです。愛犬の様子を見つつ、また体調を考慮しながら、こうしたアイテムを使用するのもいいでしょう。
まとめ
口臭は仕方がない――犬だもの。という判断は安易すぎます。なぜなら、犬の口臭は予防できるものだからです。口臭がするということは、冒頭でも述べたように何らかの異常が体で起こっていることの証拠です。日常的なケアと併せて、予防にも努めましょう。
冒頭にも述べましたが、犬の飼育にあたって歯磨きを意識している人は少ないのが現状です。犬を飼育していく中で口臭などから歯周病や虫歯に気付くという飼い主さんがほとんどです。
人間も虫歯や歯周病になるように、犬だってまったく同じように虫歯や歯周病になります。虫歯を放置することで別の病気を発症することもありますから、犬の健康管理を考えるなら、歯磨きについてもしっかりと意識をしておくことが大切なのです。