犬が苦手な人に聞いてみると、「小さい頃に大きな犬に追いかけられたことがある」という理由をよく聞きます。近所で飼っていた犬が逃げ出し、ビックリして自分も逃げたら犬の習性で追ってきたというのです。
また、「噛まれたことがある」という経験も耳にします。犬は人間と違って、器用に手足を使うことができません。物を観察するために口に物を入れるなどして、その物の情報を知ろうとします。
噛み癖は子犬の頃の甘噛みから始まりますが、中型犬や大型犬の甘噛みは犬が遊んでいるつもりでも、人を傷つけてしまう危険があるでしょう。
犬の噛み癖はしつけで直すことができます。ポイントをいくつかまとめました。
どうして噛み癖ができてしまうのか?犬が人を噛んでしまう5つのわけ
犬の噛み癖とは、単にじゃれて人の手を甘噛みするだけではありません。
- 飼い主にとって噛んでほしくないもの
- 犬が噛んではいけないもの
これらを指します。まず、子犬が物を噛み始めるのは歯が生え変わる時期です。この頃は歯茎がむずむずしているようで、クッションやテーブルの角などを噛み始めます。さらに、撫でようとしている人の指を噛んだりすることは、このような場合があります。
- 遊びの延長だと認識。
- 嫌なところを触られた。
- 撫でられた人が苦手な人物。
このように、攻撃性と不快感を示している場合もあるのです。また、ダッスフントやコーギーなどは視線が他の犬に比べて低いという特徴があります。そのため、彼らの視線の先にある人の足元が動く様子に、本能で噛みついてしまうということもあるのです。
庭で飼っている犬が、宅配便や郵便配達の人に吠えて噛みつくというのは縄張り意識が強いためであったり、知らない人が家の中に侵入してくる恐怖から、衝動的に噛みついてしまうという場合もあります。どうして我が家の犬に噛み癖があるのか…。以上のことを踏まえて、よく観察してみることをおすすめします。
犬が飼い主さんを噛む理由として考えられるのは、大きく分けて5つあります。自分の犬の状態がどこに当てはまるか、思い出してみて欲しいと思います。
歯の生え替わり時期
犬も人間と同様に歯が生え替わります。その時期を「歯牙脱換期」といい、乳歯が抜けて永久歯に生え替わります。この時期は、歯茎がムズムズするのか目の前にあるものを手当たり次第噛んでしまいます。
秋田犬を飼っていたときは、食卓テーブル用の椅子の支えの部分を良く噛まれました。木製の椅子でしたので、噛み具合が良かったようです。父が気に入って購入した家具がダメになってしまいました…。
なぜかと言いますと、当時飼っていた秋田犬が出産して5匹の子犬がいたのですが、その子たちがそれぞれ支えを噛んでしまったために、一晩ですべての椅子に噛み痕が残ってしまったのです。
子犬が何かを噛もうとしているようでしたら、犬用ガムや噛んでもよいおもちゃを与えるようにしましょう。もし、家具などを噛んでしまうような現場を見たら、現行犯で「ダメ!」と叱り、噛んでも良い物を渡すようにしましょう。
攻撃行動
犬は群れで生活する動物であるため、自分が家族だと認識していない人や生き物が入ってくると、縄張り意識を発揮し、本能的に攻撃的になります。宅配業者や工事関係の業者さんなどに吠えかかることがあるかと思いますが、これが攻撃行動です。自分のテリトリーに知らないやつが入ってきたことを飼い主さんに教えています。
飼い主さんが犬を制すれば、吠えるだけで済むこともあります。しかし、外飼いで玄関付近に繋いであると、気の強い性格の子は噛みついて威嚇することも十分にあります。
外飼いをしていた頃、夜中に仕切りに吠えることがありました。そのうちに人の声もしてきたので、慌てて父が見に行ったところ、夜中に車上荒らしをしようと近づいてきた人が噛まれていました。
犬小屋から車庫まで離れていたのですが、この飼い犬(秋田犬・メス・当時3歳)にすれば「吠えても近づいていたこと」と「自分が家族と出かけるときに乗る車に入ったこと」がテリトリーを荒らされたと感じたようです。
父が警察を呼んで事なきを得ましたが、捕まった人は、ふくらはぎを噛みつかれてすごく痛がっていたのを覚えています。
このように、犯罪者に向かっていくのは良い例となりますが、宅配ピザの配達員さんに噛みついたなどの話を耳にすることがありますので、リードの長さ調節や来客がわかっている場合はケージに入れるなど対策が必要です。
不快・怒りや興奮状態
犬同士の相性不一致や、遊びすぎて興奮し過ぎるということが原因となって噛んでしまうことがあります。また、知らない人が触ろうとすることに不快さを感じるような場合も結構ありますので注意が必要です。
この場合は、触ろうとしたときに「ウー」と低い声を発していたり、犬のしっぽが垂れ下がっていたりというボディランゲージを見せるはずです。
犬がしっぽを下げている場合は、恐怖や不安などがある場合です。犬はかわいいので触りたくなってしまう気持ちはわかります。でも、触ろうとしている子が上記のような素振りを見せたり、吠えてきたりした場合は、触らないようにしましょう。余計なケガを防げます。
多頭飼いをするために犬同士を引き合わせた時に、性格や相性が合わないような場合は、興奮して相手を噛んでしまうことがあります。著者はその現場を何回か見たことがあります。人間の方が怖くなってしまいますので、近づける際には十分注意してほしいと思います。
遊びの延長
子犬に多いのですが、遊んでいる最中に甘噛みのような感じで噛んでくることがあります。兄弟と遊んでいるかのように勘違いしているのかもしれません。成犬になっても子犬の時のくせが抜けないと、飼い主さんと遊ぶときに甘噛みすることもあります。
飼い犬(秋田犬・オス・当時8ヶ月)と遊んでいた時のことです。腕や頭などを甘噛みして困りました。飼い犬は遊んでいるつもりですので、攻撃性は感じられません。むしろ、しっぽを振ってお腹を見せたり著者の顔を舐めたりしてすっかり楽しんでいる様子でした。
兄弟にしているような気持ちで甘噛みをしているのであれば、噛まれたときに「痛い!」と大きめな声を発しましょう。そうすると、相手が痛がっていることが伝わり、噛むことをいったんやめます。
この甘噛みは、くせにさせないようにしましょう。噛まれたら大きな声で「痛い!」ということで抑制につながります。
ケガや病気で痛む場所を触った
犬も病気やケガをするのですが、毛に覆われている部分だったり、体内に患部があったりする場合、見た目ではわかりませんよね。具合の悪い部分を誤って触ってしまった場合は、犬も噛んで飼い主に知らせます。
強くガブッとまではいきませんが、噛もうとするしぐさかちょっと噛んで申し訳なさそうな顔して噛んでしまったところを舐めるかという動きをします(経験あり)。
このような場合は、触ったところに痛みを感じている可能性がありますので、その他の症状がないか確認し、動物病院を受診することをお勧めします。
犬の噛み癖を直す方法
噛み癖は、一度ついてしまってもしつけによって直すことが可能です。飼い主の家族に対して噛むのであればまだしも、ご近所の方や通行人など、他人を噛んでしまったらトラブルの元になってしまいます。特に他人に対しての噛み癖がある場合には、早急に問題の解決が必要になってくるのです。
しつける前に、ご褒美を用意します。これはおやつやおもちゃの他に、飼い主が褒めるというものでも大丈夫です。おやつはカロリーの過剰摂取に注意しましょう。
おもちゃは与えることで集中力が途切れてしまうので、最後に与えるようにします。飼い主のほめ方は「良い子」や「グッド」の一言をかけた後に、軽く一度撫でてあげるようにします。あまりにも激しく撫でると集中力が途切れ、犬が興奮してしまいます。
ご褒美の特徴を理解したら、さっそく実践です。
噛まれたらしつけのチャンス
噛まれたら、犬に飼い主も痛いことを伝えます。大きな声で「痛い!」と言います。それから犬の目をじっとにらむようにします。こうすると犬はビックリして口を離すでしょう。今くらいの力で噛んだら痛いんだということを相手に伝えるためです。
遊びの最中でも、『噛まれる度に声を上げてにらむ』を繰り返しましょう。噛み癖は急にはなくなりませんが、何度もやって覚えさせることがしつけとなります。できるだけ子犬のうちからしつけをしていきましょう。成犬になってからでは時間がかなりかかってしまいます。
噛まれたら毎回やるようにしてください。飼い主さんの一貫した態度が大切です。決して叩くなどの暴力をふるうようなことはやめてください。犬は理解できません。根気よくダメなことはダメだということが大切なのです。
しつこく噛んでくる場合には、例え甘噛みや犬にとっては遊びでも「痛い!」と少し大きな声を出します。驚いて犬が離れても、少し無視をするように時間を置くようにしましょう。
母犬が行う行動として、犬の両頬にあたる部分を抑えてぶるぶるとゆすって怒ることも有効です。
また、犬の体をひっくり返して口を手のひらで押さえつけても大丈夫です。この時に、思い切り抑えるのではなく、指を広げて抑えるようにしましょう。
噛むことを我慢させない
犬は、元々は人の狩のお供として役割を果たしてきたという歴史があります。そのため、物を噛む習性を持っているのです。ですから犬が本来持っている、噛みたいという欲求を満たしてあげることも大切です。
犬が噛む専用のお気に入りのおもちゃを用意しておくことも、一つの対策です。その過程で、おもちゃ以外の噛んでほしくないものを噛んだ場合には「ダメ!」というように声を出して叱ります。
また、その時に噛んだ部分にしつけ用のスプレーをかけて噛ませないようにすることもできます。スプレーの代わりにわさびなどを用いる手段もありますが、犬によってはお腹を壊してしまう場合もありますから、あまりおすすめはできません。
噛み癖対策のためのアイテム
大型犬であったり、しつけを行おうとしてもなかなか改善されないといった場合には、道具を利用するという手段もあります。
お散歩の際に、通行人や他の犬に噛みつく癖のある犬には、ヘッドカラーというアイテムが便利です。
アメリカやイギリスのメーカーのものが有名で、マズルの部分に輪をかけるようにして装着します。犬がリードを強く引っ張ると、自然にマズルに圧力がかかり、犬に対して適度な不快感を与えるものです。
ただ、物によっては虐待と変わらないような方法をとっている製品もあります。そのような物を利用することは愛犬との信頼関係を壊すことになりますし、暴力でおさえつけるのと何ら変わらず、根本的な対策になりません。
噛み癖にはしつけ教室もおすすめ!
そして最近では、ドックトレーナーがしつけ教室を開催しているところもあります。飼い主も一緒になって犬の噛み癖を解決するところから、プロがしつけてくれるメニューがあるなどさまざまです。
ただし、こうしたところは都心を中心とした開催が多く、地方ではなかなかこのようなサービスがありません。コストも時間もかかるので、なるべくなら飼い主自らの手で犬をしつけていきたいものです。
ただ、間違った知識でしつけを行うことは非常に危険で、最悪の場合は犬との信頼関係が崩壊してしまい、手に負えなくなってしまうこともあります。このあたりは犬も人間も同じことが言えますよね。
犬に正しくしつけを行うためには、飼い主がまずドッグトレーニングのためのDVDなどで正しい知識を身に付けてから始めることが肝心なのです。
犬の噛み癖のしつけでやってはいけないこと
犬が噛んだときにさまざまなことをして、噛ませないようにしている飼い主さんを見かけることがあります。その中には、やってはいけない動作があります。
マズルを掴む
昔から噛んだらマズル(鼻先)を掴むようにするとよいなんて言われてきました。これをやるのは、犬にとって嫌なことです。何回もやられると、飼い主さんに反感を持ったり、ストレスに感じたりしてしまいます。
嫌なことをされたらやらなくなるのではないかと思われがちですが、これはあまり意味がありません。むしろ、握る手を嫌がりますので、逆に噛まれてしまうことがあります。甘噛みで済まなくなり、ガブッと噛まれてしまうことだってあると思っておきましょう。
犬の口に手を入れる(手を突っ込む)
犬に噛まれた際に、噛まれた手をそのまま上あごの方に押し上げたり、喉の方まで手を突っ込むようにしたりする飼い主さんがいます。これをやってもはっきり言って効果的とはいえません。大型犬であれば、嗚咽を漏らしてしまうようなつらい目に合わせてしまうことになります。
小型犬であれば飼い主さんの手が大きければ、顎が外れてしまうようなことになる可能性が出てきます。これだと犬への虐待に近いのではないかと思います。口の中に手を入れることは、飼い主さんにとっても飼い犬にとってもケガの危険性がありますので、やらないようにしましょう。
やはり噛み癖に対してはしっかりと声と態度で示すしつけをするようにしましょう。その方が効果的ですし、ケガというリスクを背負うことがないので安全です。
まとめ
愛犬の噛み癖は、その原因をよく観察して突き止めることで解決できる確率がぐっとあがります。自分の犬が、どのような場合に何に対して噛みつくのかをまずは解明しましょう。
その上で正しい方法でしつけることで、犬も人間も安心して快適に暮らすことができるようになるのです。
こちらも併せてチェック!